第129話
文字数 466文字
セオリー通りの小手を誘い出しての、小手すり上げ面を選択した颯来。籠手に隙を見せて誘うか、こちらが面を打つ意識を相手に思わせるのがこの手の定石である。しかし颯来はそのどちらも餌を撒いていない。
颯来は、我慢できず豊橋の誘いに思わず手が出た、フリをして打ち込む。豊橋は颯来の狙い通りの『出鼻小手』。
豊橋の小手打ちは颯来の籠手に当たる直前、竹刀に弾かれる。そしてそのまま豊橋の面を捉えるはずであった颯来の竹刀もまた空を切った。
そんな状態が繰り替えされる。
(ンニャロ……お前も彦側の住人か……)
颯来の読み通りに進むと必ず豊橋は避けて見せる。必勝のはずの返し技がことごとく避けられてしまう。
危ういのは颯来の方である、読み合いで負けた場合、間一髪何とか凌いできたものの、今のところ対策がない。
現に三人の審判の内、二本の旗が上がれば『一本』とされる中、一つの旗が上がった豊橋の打ち込みは少なくない。
四分が経過した。冷たい汗をかいて疲弊しているのは颯来の方だった。そして試合は延長戦に突入する。
「颯来……」
会場には愉香の姿があった。
颯来は、我慢できず豊橋の誘いに思わず手が出た、フリをして打ち込む。豊橋は颯来の狙い通りの『出鼻小手』。
豊橋の小手打ちは颯来の籠手に当たる直前、竹刀に弾かれる。そしてそのまま豊橋の面を捉えるはずであった颯来の竹刀もまた空を切った。
そんな状態が繰り替えされる。
(ンニャロ……お前も彦側の住人か……)
颯来の読み通りに進むと必ず豊橋は避けて見せる。必勝のはずの返し技がことごとく避けられてしまう。
危ういのは颯来の方である、読み合いで負けた場合、間一髪何とか凌いできたものの、今のところ対策がない。
現に三人の審判の内、二本の旗が上がれば『一本』とされる中、一つの旗が上がった豊橋の打ち込みは少なくない。
四分が経過した。冷たい汗をかいて疲弊しているのは颯来の方だった。そして試合は延長戦に突入する。
「颯来……」
会場には愉香の姿があった。