第14話 千城

文字数 529文字

 県大会男子個人戦、颯来は四強まで順当に勝ち進んでいた。

 小学生時代は市民大会くらいしか出場したことがなく、そこでは優勝を飾ってきた。しかし市大会レベルで、県での実力は颯来自身計り知れていなかった。
 中学一年の個人戦は県大会一回戦で白銅中の三堀〔みつぼり〕という男に負けている。しかし彼は当時三年生でもういない。借りは高校一年の時返すしかないと考えている。そして次の颯来の相手はその三堀の後輩、白銅中『千城』となっている。


 負けた中学校は退館していて県武道館は閑散としてはいるが、残った各校の応援の声は逆に響き渡っている。八面あった試合場は男女合わせてもう四面しか試合が行われない。四試合同時に試合が開始される。
 面紐をきつく縛ると、颯来は軽く跳躍、屈伸などで緊張を和らげる。選手たちは主審の合図を皮切りに試合場へと一歩踏み入れる。
 相手と合わせて礼をすると、三歩で開始線に竹刀の先が合うように蹲踞〔*そんきょ 腰を落として構えること〕する。
「始め!」
 主審の号令と共に立ち上がる。同時に全ての試合場から気合の発声がされる。
 部員の多い白銅中サイドから声援が一段と大きくなる。少ないながらも城山中の五人も声を出す。しかし五人の声はどことなく熱が入っていない。
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