第27話
文字数 601文字
颯来は去年の夏、中々人数の揃わない中学校の部活を休んで、剣友会の合宿で偶然坂月中を訪れていた。
稽古の休憩時間、その時グラウンドでは野球部の練習試合が行われていて、見たのが彼方であった。
面白いように打ち取る彼方。しかし見ている颯来には打たない事には楽しくない。『どうしてあんな遅い球が打てないのか』と野次ったのが坂月中の部員に聞こえてしまい、試合後、十球勝負した。
「おい、お前。一球でも前に飛んだらお前の勝ちでいいよ」
「言ってくれるぜ」
楽勝だと思っていた、しかし……。
ストレートにチェンジアップを混ぜられ、最後の一球だけカスることができた。それが精一杯だった。ぐうの音も出ない。
「……」
「おい……ファールチップで三振、いや十振だな」
***
何故か颯来はチェンジアップだけは知っていた、遅い球だということも。望未は颯来が燃えていたわけを理解した。
「チェンジアップはストレートとの緩急が大きいほど効果がある」
「腕の振り方は同じなのに……」
「スピンの差だよ。スピンが掛かる程、投げた初速とバッター近くの終速の差が少ない。チェンジアップは回転が少ない球だ」
「なるほど、望未……ならお前もっとスピンを掛けろ」
「は?」
「は? じゃねーよ。スライダー程ストレートに回転が掛かってない。ってことはまだお前はストレートを速く投げられる」
颯来の言葉に望未は驚きながら苦笑いする。
「……そんな簡単なことじゃねーよ」
稽古の休憩時間、その時グラウンドでは野球部の練習試合が行われていて、見たのが彼方であった。
面白いように打ち取る彼方。しかし見ている颯来には打たない事には楽しくない。『どうしてあんな遅い球が打てないのか』と野次ったのが坂月中の部員に聞こえてしまい、試合後、十球勝負した。
「おい、お前。一球でも前に飛んだらお前の勝ちでいいよ」
「言ってくれるぜ」
楽勝だと思っていた、しかし……。
ストレートにチェンジアップを混ぜられ、最後の一球だけカスることができた。それが精一杯だった。ぐうの音も出ない。
「……」
「おい……ファールチップで三振、いや十振だな」
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何故か颯来はチェンジアップだけは知っていた、遅い球だということも。望未は颯来が燃えていたわけを理解した。
「チェンジアップはストレートとの緩急が大きいほど効果がある」
「腕の振り方は同じなのに……」
「スピンの差だよ。スピンが掛かる程、投げた初速とバッター近くの終速の差が少ない。チェンジアップは回転が少ない球だ」
「なるほど、望未……ならお前もっとスピンを掛けろ」
「は?」
「は? じゃねーよ。スライダー程ストレートに回転が掛かってない。ってことはまだお前はストレートを速く投げられる」
颯来の言葉に望未は驚きながら苦笑いする。
「……そんな簡単なことじゃねーよ」