第75話 時期

文字数 448文字

 望未には兄がいる。とても優秀な兄貴だ。兄は名門、白山学習院初等科に合格している。両親は望未にも同じことを望んだ。
 しかし望未はその両親の期待に応えられなかった。そして父は言った。
「社会では、人を使う側と、使われる側に分かれる。人の上に立てる人間は少ない」

 望未は地元の野球チームに入れられた。
「集団の中で役割ができる、お前はそれを学んできなさい」
 それが望未が野球を始めたきっかけだった。

 身体が小さく、レギュラーになれない望未は、いつしか監督からバントだけ練習するよう言われる。そして中学校に上がる時、それが望未の父親が監督に頼んだことだったと知る。
 望未は父親に見放されたのだ。
『犠打』……人を活かすために犠牲になりなさい、それも立派な役割だ、望未は『人を使う側』にはなれない。そういうメッセージであった。

 進学校に成長した大城学園、最低でもそこに進学すること、それは望未が野球を続けられる条件だった。
「俺は親父を見返してやるんだ、甲子園に行って……。そういう颯来は何で剣道やってんだよ?」
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