第67話

文字数 586文字

「……ったく三人じゃねぇーか」
「ん? 次はどこ行きたい?」
 望未と遥をエスコートするのは千城だ。
「……暇なのか?」
「暇じゃねーよ、俺だって愉香ちゃんのクラスの『メイド喫茶』にずっと居てーよ」
「愉香、かわいかったね」
「遥ちゃんだってきっと似合うよ」
「そうかな?」
「……お前も年中無休か?」
「ん? 何か言ったか?」
「いや……五百円ならこんなもんか……」

 遥の男性恐怖症はもう、大丈夫なようだ。
(彼も一役買ったか?)
 望未は千城を見てそう思う。千城はイケメンだが女子に対してかなりチャラい。
 野球部のマネージャーの仕事も、始めは先輩マネージャーたちに隠れる様に行動することが多かった。特に三年生の体育科は少し柄が悪い。それでも少しずつ克服していった。
 もちろん千城はそんな遥の事情など知らない。千城は他の女子には手など簡単に握るが、遥にはパーソナルゾーンに入り込まない。
(特別な能力か? こういう男もいるんだな)
 恐らく遥も同じように感じているのだと思った。


「……その後、どうなんだよ」
 千城が望未に小声で小突く。
「何が?」
「何がって、遥ちゃんだよ」
「相変わらずだよ」
 望未は精一杯、すまして見せる。千城の意図が分からないわけでもない。
「……良いのか?」
 千城も分かっている。
「良いも何も……」
「あ、そうか、お前が上手くいくと、俺は……。やっぱり君はそのままでいこうか」
「……」
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