第19話

文字数 319文字

 野球部は途方に暮れていた。中村のケガは深刻であった。左肘靭帯損傷、次の試合、いや今大会は絶望だった。
 キャプテンであり、四番であり、望未の球を唯一捕れる捕手であった。
 チームとしてまとまっているが選手層は薄く、技術的にも野球の知識にしても、中村に及ぶ者はいなかった。
 中村の一振りが城山中最大の攻撃であり、望未の投球無くして十六強入りはあり得なかった。城山中の大黒柱である。

 中村は城山中の精神的支柱でもあるためベンチ入りはさせる。打撃は皆でつないでいくしか他ない、本来それが打線である。問題は捕手である。
 何人かに試したが『高速スライダー』を取れない。打者がバットを振ると直球も取れないのである。

 試合どころではないのが現状であった。
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