第125話

文字数 563文字

「おい、手前味噌って何だ?」
「え? あぁ、『自慢になってしまうけど』みたいな意味です」
「……そうか」
(え? それが気になって見逃したのか?)
 拍子抜けだった。望未はゆっくりボールを捏ねながら返球する。

 そして第二球、外角から逃げていくスライダー。
「おい。教科書通りの外角低めで大した自信だな」
 バット一閃、打球はライト前へ。ツーアウトランナー一、三塁。
(俺のリードのお手並み拝見、とは大師の球を打ち返せる自信があったんだ。里見と同程度の球なら打てる、と)
 里見との差をつけるためには配球でサポートするしかない、望未はそう思い知った。
(バカ、もっと周りをよく見ろ。あの時颯来だってそうしてたじゃないか)
 颯来がキャッチャーをやった試合を思い出して、自分を叱咤する望未。単調にボールを返すのではなく、強く投げたり、ゆっくり返球したり、場面によって投手の気持ちに強弱をつけることを意識する、一球一球丁寧に。
 そして五番里見を三振に打ち取る。いきなりのピンチは何とか凌いだのであった。


 大城学園は一番センター今関、二番セカンド越川、三番ショート中西、四番ライト仙波、五番キャッチャー来生、六番サード川島、七番ファースト山口、八番レフト水越、九番ピッチャー春原。
 里見は大城学園の攻撃を一巡目、三回をしっかり三者凡退に打ち取ってみせた。
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