第36話 パフェ

文字数 631文字

 遥の携帯端末機がメッセージ受信を知らせる。颯来からのメッセージだ。とっくに颯来は遥の個人トーク先を知っているのに、今でも四人のトークルームに送ってくる。


 実のところ遥は颯来からちゃんと告白を受けていない。それでも遥は颯来の側に寄り添っていた。それは遥の目が見えていない時、颯来がくれた沢山の言葉、気持ちに嘘偽りがなかったから。そしてそれらに遥は本当に救われてきた。でもその義理があるからではない。遥の気持ちはその時、間違いなく颯来にあった。


 自分に向けられている感情は何となく分かる、それは遥でなくたってそうだ。
 遥は目が見えない頃、『見えないものが見えていた』、愉香の優しさ、望未の温かさ。そして感じていた、愉香の気持ち、颯来の気持ち、本当の気持ちを。
 気付いてしまった目が見えた時、自分の気持ち。この心が、揺れる想いこそが恋だと思った。



「遥、駅前に新しいカフェができたの。評判なんだって、今度行こうね」
 愉香がそう言うと、
「この間行った、食い放題、焼肉、寿司、デザート何でもあるから遥ちゃん俺とデートしようね」
 必ず颯来も言い返す。
「あの映画、話題なんだって。遥いつか絶対見ようね」
「映画館ってさ、動員数が多いと期間を延長するんだろ? 俺、毎週観に行くからずっと上映してるはずだ」
 結局、次の映画になってしまい、颯来は覚えた内容を、遥に一生懸命伝えた。


「懐かしいな……」
 遥は思い出して微笑む。
「よし、颯来君と映画を観に行こう」
 遥はメッセージを送信した。
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