第105話

文字数 606文字

「調子狂うな……」
 身体は動けている、決して調子は悪くない。

 三回戦。球回しの時、二塁送球の精度で今日の調子を測るキャッチャーは少なくない。
 マウンド上の春原は望未を見て笑っている。それが何だかやり辛い。その春原の思う壺とも言える応援席に遥の姿を探す望未。
 記録員として一人だけ、選手かマネージャーがベンチに入ることができる。遥はベンチ入りできなかった選手たちと共に応援席にいる、はずがその姿は見えない。
 ベンチに戻る際、応援席の一年に聞いてみる。
「あ、遠野先輩なら、平野先輩と一緒に応援席組のジャグ取りに行ってますけど」
 その答えに望未は安心する。

 試合が始まり、後攻めの大城学園。ワンアウト、ツーアウトとなっても二人のマネージャーは応援席に姿を現さない。
 スリーアウトチェンジで再びベンチ上の応援席に声緒を掛けようとしたその時、マネージャーたちは戻ってきた。
 安心した望未が総力を傾けた試合は、2対0で勝利した。
 春原は被安打四、四死球無しの完封。望未も盗塁を刺し春原を助けた。しかしながらチーム得点力の課題は、次の更科戦での不利を意味している。今日の投手から二得点レベルでは里見から点を奪うのは難しい。
 大城と更科との打撃力の差は、そのまんま投手への負担の差となる。里見を打ち崩すことと望未のリードが、春原にとって最大の援護となる。
 対更科戦まで後一つ、望未は、いや大城学園の士気は次第に盛り上がっていた。
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