第68話

文字数 409文字

「彦、どこ行ってやがった」
 颯来の声だけが校舎の外階段から飛んでくる。
「やべ、見つかった」
 千城は颯来がこっちへ走り出す姿を認めると逃げ出す。
「じゃ、ごゆっくり」
「……忙しいんだな」
「そう言ったろ」
「ありがとねー」
 女子の声には地獄耳の千城は遠くから返事だけ残して去る。
「呼んだらすぐ来るよ」

「どこ行きやがった」
「あっち」
 望未はぶっきら棒に指をさす。
「ニャロメ、何してやがった」
「敵情視察、だろ」
「は?」


 一瞬の『間』が望未、遥、颯来の空気をガラリと変えた。望未は二人からそっと距離を空けた。
「遥ちゃん、楽しんでる?」
「おかげさまで」
「遥ちゃん、ちょっといいかな?」
 颯来はチラッと望未を見る。遥も望未を盗み見るように視線をずらす。
「ちょっとさっきの美味そうなたこ焼き屋、もう一回見て来るわ」
 望未はそう言ってその場を立ち去る。
「俺の分はいいからな」
 望未と颯来は視線をしっかり合わせる。
「五百円じゃ二つ買えねーよ」
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