第113話 大将

文字数 822文字

 県大会二日目、団体戦も四強、準決勝が始まろうとしていた。優勝から遠ざかっていた城西。今年は主将高宮を中心に良く鍛え上げられ、天才千城を擁し優勝候補筆頭として名高い。
 準決勝組み合わせは、去年の夏の覇者明正商業対春大県チャンピオン白銀高校。春大では準決勝で白銀が勝利している。
 一方、城西高校は昨年の鳳王旗というオープン大会ながら全国区の試合で十六強の成績を残した日東実業高校と対戦する。春大では日東に準々決勝で城西が敗退している。

 白銀高校は今年も良くまとまったチームで米原主将を大将に、驚異の一年生ルーキーがまさかの副将、豊橋。昨年はケガでレギュラーから外れ、満を持して復帰した三年の三島が中堅に、二年生にして化けた小田原が次鋒。その実力は『今年最強の先鋒』の呼び声が高い高宮に匹敵すると噂される三年、先鋒品川。
 その白銀高校は明正商業を3対0で圧倒する。白銀高校が誇る東海道新幹線クインテットである。

 城西高校も高宮が先鋒で勢いをつけると、だいぶ貫禄が付いてきた二年の板倉も続き、中堅千城で一気に勝負を決める。副将の三年板谷も意地の勝利を決めると大将颯来がしっかり締めくくる。城西高校は準決勝5ー0の快挙をやってのける。春大での雪辱を果たしての決勝進出であった。
 そして赤、白銀高校、対、白、城西高校の因縁の対決が始まる。


***


「メンバーを発表する」
 大会前、顧問の先生が恒例のレギュラー決めの部内試合での結果を踏まえた選考結果が伝えられる。
「先鋒高宮」
「はい」
 続いて次鋒板倉、中堅板谷、副将未咲、大将千城、と告げられると、高宮以外の三年生たちが声を出す。
「先生、お話遮って申し訳ありません」
 そう前置きをすると、口を揃えて『千城大将』に不満があることを申し述べる。
「板谷を大将にお願いします」
 三年生たちの意思統一はできている。
(椎名先輩……)
 恐らく補欠選出であろう椎名を見た颯来は根岸にも目をやる。それは何か違和感でしかなかった。
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