第137話 キープレーヤー
文字数 484文字
セットポジションを取る。雨が降ってきた。弱い雨だが春原には雨が落ちる音さえ聞こえる気がした。
ランナーを見て、ミットに視線を戻す。
(行くぞ、来生)
(来い、大師)
春原がモーションに入る。彼方のグリップを絞る拳の力が望未にまで伝わってくる。
(春原の肘が高い)
彼方に電気信号が走る。
(違う、何か違う球が来る……?)
スイングに入っていた彼方の身体は腰が回転して開いている。流石なのはバットだけギリギリ振らずに残している。しかし、堪え切れずにバットが回り空を泳ぐ。
「ストライクバッターアウト!」
思わず渾身のポーズを取る春原。
決め球は縦のカーブ。ストレートとの球速差が五十キロにも成るスローカーブであった。堪えていたバットも大きく縦に変化していく球まで捉えられなかったのだ。
膝を付いていた彼方がゆっくり立ち上がる。
「おい、今まで隠していたのか?」
「はい。あれを投げる時、クセが出るんで」
「……いい球だ」
「アイツも彼方さんを打者に転向させられるほどの才能ですよ」
「お前が出会った才能は『春原』と『城山中のキャッチャーだろ』……捕手と投手の二対一か……打者には分が悪い」
ランナーを見て、ミットに視線を戻す。
(行くぞ、来生)
(来い、大師)
春原がモーションに入る。彼方のグリップを絞る拳の力が望未にまで伝わってくる。
(春原の肘が高い)
彼方に電気信号が走る。
(違う、何か違う球が来る……?)
スイングに入っていた彼方の身体は腰が回転して開いている。流石なのはバットだけギリギリ振らずに残している。しかし、堪え切れずにバットが回り空を泳ぐ。
「ストライクバッターアウト!」
思わず渾身のポーズを取る春原。
決め球は縦のカーブ。ストレートとの球速差が五十キロにも成るスローカーブであった。堪えていたバットも大きく縦に変化していく球まで捉えられなかったのだ。
膝を付いていた彼方がゆっくり立ち上がる。
「おい、今まで隠していたのか?」
「はい。あれを投げる時、クセが出るんで」
「……いい球だ」
「アイツも彼方さんを打者に転向させられるほどの才能ですよ」
「お前が出会った才能は『春原』と『城山中のキャッチャーだろ』……捕手と投手の二対一か……打者には分が悪い」