第8話 自治体OSの性能(2035年)

文字数 1,635文字

(鈴乃木が野球チームで言えば、監督・トレーナーの能力に相当する自治体OSの性能を説明する)

鈴乃木が説明を続けた。


「自治体OSの役割は、野球チームで言えば、監督・トレーナーに相当します。

1) 自治体OSは、アプリ間のデータの共有を図り、共通データベースを作ります。

今までのアプリは、野球の選手が、一人で、トレーニングしているようなものです。選手の身体能力を一人分のデータから判断し、一人一人、別のトレーナー(システムバージョンアップ)がついています。ゴルフのような個人競技と同じ方法をチームスポーツにも使っています。

自治体OSは全データを一元管理します。試合中のデータは、もちろん、個別のトレーニング中のデータも含めてです。

アプリは、入力データを得て、データをデータベースに保存して、処理して、結果を出します。これを個別のアプリ毎に行うと、入力とデータベースに重複が出て、非効率になります。共通データベースがあれば、この問題が解消できます。自治体OSは、入力データをコピーして、共通データベースを自動的に作成します。この方法では、自治体OSの導入前の古いデータは、個別アプリのデータベースにしかありません。しかし、アプリの大半は、結果を出すのに古いデータを使いませんので、この点が、問題になるアプリは少数です。また、自治体OSにはデータコンバータが付いているので、この機能を使えば、古いデータは、共通データベースに登録できます。全てのデータが、共通データベースにあれば、アプリのバージョンアップ時に、アプリ用の個別のデータベースを削除して、共通データベースを使うようにアプリを変更します。こうすると、アプリのメンテナンスが容易になると共に、データベースの重複が解消されます。

この方法は、重複問題を段階的に解消できる長所があります。自治体も、補助事業によって、中央官庁のミニチュアになっていますので、組織が、部門毎に縦割りになっていて、アプリも縦割り、アプリ付属のデータベースも縦割りになっています。

縦割り行政が、アプリに表れています。自治体OSを先導的に導入しているリトアニアでは、縦割りの省庁を残す意味がなくなり、省庁はバーチャル機能に置き換えられています。つまり、リトアニアでは、自治体OSで、データの省庁間の垣根がなくなった結果、ハードウェアとしての省庁は、雪が融けるように消えてなくなりました。

2) 自治体OSは、バーチャル・ツールと連動します。バーチャル・ツールは、ベンダーによっては、メタバースと呼んでいるところもあります。

2020年ころから、音声入力で、家電製品を制御できるマイク付きAIスピーカが出てきました。

今使っている電子会議システムでは、仮想スクリーンの上に、グラフや表を、表示しています。

こうしたバーチャルな入出力は、どのアプリに共通して使う機能ですから、OSがサポートすれば、重複が避けられて、アプリ開発のコストが劇的にさがります。

実際に、いろいろなOSが、バーチャル・ツールのサポートをしています。バーチャル・ツールの標準インターフェースは、現在、IEEEで基準化の改訂作業中です。

自治体OSは、この基準ができる前に開発されたアプリにも、バーチャル・ツールのインタフェースを提供します。

実際に、現在お使いの電子会議システムは、弊社のバーチャル・ツールと連動機能を使っています。


3) 自治体OSの基本は、クラウドOSです。

ネットワーク化が進んだ現代では、最新のOSの基本は、クラウドOSです。自治体OSもクラウドOSを基本としていますが、まだ、完全ではありません。


自治体のアプリは、データが、パソコンに保存されていて共用できないものが多いです。自治体OSは、クラウド上に仮想パソコンを作って、そこで従来のアプリを動かします。これは、過渡的な方法です。最終的には、全てのアプリを完全に、クラウド対応にすること、クラウド対応比率の100%が目標です」

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