第20話 回答;三権分立と自治体OS(2035年)

文字数 1,662文字

(スミスが、三権分立と自治体OSの機能について説明する)


スミスが口を開いた。

「そのお答えは、私がしましょう。

問題は、2つです。

第1は、DXによるリターンの問題です。

第2は、ヒューリスティックの問題です。

第1のDXによるリターンの問題では、DXによって、利益を受ける人と損失を被る人のバランスを考える必要があります。

簡単に言えば、前者の政治パワーが、後者の政治パワーを押し切るパワーバランスが実現しなければ、DXは、実現できません。

ご指摘のように、損失を被る人には、事務処理などが自動化されることで失業する人と、行政の管理職や、政治家で、DXによって、権益が侵害される人がいます。

一方、DXによって、利益を受ける人は明確な勢力ではありません。

これでは、DXをすすめるパワーバランスが生じません。

DXをすすめているという表明をしないと、市民やマスコミにたたかれます。議員は、選挙に当選できなくなりますので、ともかく、DXをすすめているフリをすることが求められますが、フリだけすれば、中身は素人(しろうと)には、わからないので、問われないのです。

しかし、問題を先送りすれば、自治体は、いつか破綻します。つまり、DXをすすめているフリをすることは、短期的には、合理的な戦術ですが、中期的には、合理的な戦略ではありません。

自治体OSには、政治パワーバランスモジュールが含まれています。

政治パワーバランスモジュールは、自治体に対して2つの手法で働きかけて、政治パワーバランスの正常化をはかります。

1)データ収集とエビデンス情報の有権者への公開を通じて、自治体の現状を有権者に開示します。これは、有権者の投票行動を通じて、政治を正常に復元する手法です。

2)代替案を含んだ推奨政策リストの提示です。

自治体OSは、自治体の政治が、パンとサーカスを目指してしまえば、効果を発揮できなくなります。パンとサーカスを防止するためには、過去の政策をエビデンスで評価すること、望ましい推奨政策のリストを開示することが必要です。現在、議会で、検討されている政策について、過去のエビデンスをつけて評価することで、有権者が、パンとサーカスに向かうことを阻止します。

例えば、現在、議題に上がっている事案と類似の提案は、2年前に提出され、その後のエビデンスでは、このタイプの法案の有効性は、何%であるといった評価情報の公開です。

こうすれば、パンとサーカスの法案は、評価が低くなりますので、有権者の支持を得にくくなります。

その場合には、より効果が見込める問題解決の代替案の情報も、有効です。

これらの解析は、データサイエンスのルールに従って、AIが自動的に作成していますので、偏見のはいる余地は少ないです。もちろん、理論的には、偏見がゼロの解析はあり得ない訳ですが、ここでは、エビデンスの情報も提示されますので、有権者は、バイアスをチェックすることができます。

これらは、政治パワーバランスモジュールのAIが、自動作成し、その結果をWEBで情報公開します。

これは、DXによるリターンを補正し、議会の機能をサポートするツールでもあります。

第2のヒューリスティックの問題ですが、お気づきとは思いますが、エビデンスを提示するという手順で、この問題は回避されます。

つまり、今までやってきたことと同じことを繰り返す場合には、その政策に効果があったというエビデンスが必要になります。

過去の政策に、効果があったか否かが判定できない場合もあります。これは、政策の実施時に、効果を測定する機能を組み込まなかった場合に、発生する問題です。


政治パワーバランスモジュールでは、政策の効果を測定する機能を政策センサーと呼んでいます。

政治パワーバランスモジュールは、2)の「代替案を含んだ推奨政策リストの提示」をするときに、政策センサーを組み込んだ提案をします。

つまり、計測なき政策は、間違った政策であるというデータサイエンス手法が、適用されています。

その結果、ヒューリスティックは、排除されます」
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