第25話 自治体シュミレーター(2035年)

文字数 1,225文字

(智子が、自治体OSの効果を自治体シュミレーターで体験する)

智子が、シュミレーターのヘッドセットをつけた。

ここでは、自治体メタバースだ。このメタバースにある自治体は、DXに対応済みの自治体である。見たところは、智子が今、働いている自治体とそっくりである。違いは、DXに対応しているかだけである。

このシュミレーターは、サンダーストームが、カスタマーに、自治体OSを使ったDXの効果を実感してもらうために作ったものだ。

庁舎の窓から、街が見える。向こうから、救急車が、サイレンを鳴らして、庁舎の隣にある総合病院に、救急患者を、搬送している。救急車のスピードは、60kmを超えている。交差点で、減速する様子は全くない。P問題が解決して、協調運転ができているので、減速は不要なのだ。

交差点には、信号機はない。

智子は視点を窓から、室内に移した。

机の上には、メインディスプレイがある。

「おはようございます」とメインディスプレイが口を聞いた。

「本日のTODOリストを表示します」

ディスプレイに、リストが表示された。

「ルーチンで処理できないリストは、3番です。他は、いつも通りの処理で、よろしいと思われますが、確認してください」

智子は、リストに目を通して、頷いた。

3番以外のリストは見えなくなった。


「3番リストの予想処理時間は、30分で、優先度はレベルCです。後で処理しますか」

「後で。今日のミーティングの予定とメールを表示」

智子は指示を出した。

「5番メールが、返信を求めています」

智子が、5番メールをチェックして、OKと返信した。

智子はちょっとめまいを感じた。

メタバースの方が、仕事が捗るのであれば、あえて、効率の悪いリアルワールドで仕事をする意味が見出せなかったからである。

このメタバースは、リアルの鏡像だった。情報を処理するには、リアルの像をいじってもいいし、鏡像をいじってもよい。実像と鏡像の間には、情報のリンクが貼られていた。操作しやすい方で、情報の処理をすればよいのだ。

メタバースは、自治体OSの目指す究極の姿を反映していた。つまり、自治体OSを導入しても、メタバースのレベルにすぐに達するわけではない。

しかし、人間の感覚は、不思議なもので、メタバースになれると、リアルで仕事をすることが、馬鹿馬鹿しく感じられる。

近くのスーパーに買い物に行く時に、自動車であれば、3分でいけるが、歩いていけは、30分かかる。その時に、あえて、歩いていくのかというのと同じ感覚だ。

自動車に乗ったことがなければ、新しい乗り物には、拒絶反応が生じる。

しかし、一度、便利になると、元に戻るのが苦痛になる。

智子は、ヘッドセットを外した。

鈴乃木が、智子がヘッドセットを外したのを見ていった。

「今、お使いのメタバースは、弊社の究極のイメージなので、違和感を覚えられたかもしれません。メタバースは、DXの学習装置でもありますので、DXの進展レベルに合わせた複数のメタバースを選択できます」
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