第23話 質問と回答;自治体OSの競争相手(2035年)

文字数 1,366文字

(鈴乃木が、想定する自治体OSの競合相手について説明する)

「言いにくいことかもしれませんが、自治体OSが、想定する競争相手についてお聞かせください。これは、つまり、自治体が、自治体OSを採用した後で、将来、より便利なOSが出てきた場合に、乗り換える選択肢としては、何が考えられるかという質問でもあります」渡辺が口を開いた。

「それは、ユーザーにとっては当然の質問です。また、弊社にとっては、弊社が、他社に比べ、競争優位な点を説明する機会をいただいたと理解します。

考えられる競合相手は、3種類です。

第1は、類似の自治体OSを提供している企業です。
このタイプの競合相手に、対しては、弊社は、先行して自治体OSを開発してきたので、優位を保っています。

第2と第3の競合相手は、より一般的なOSの開発をしている企業です。第2の典型は、スタンドアロンのOSを開発してきたマイクロソフトであり、第3の展開は、OSと呼ばれることは少ないですが、実質はクラウドOSといってもよい、クラウドサービスを提供してきたアマゾンです。もっとも、この2社のサービスは、最近では、機能の相互乗り入れが進んで、区別できなくなっているので、クラウドOSというひとつのカテゴリーとみなすべきでしょう。自治体OSは、自治体が使うアプリに特化して、OS機能を充実させていますが、それらの機能を汎用のクラウドOSがサポートしていれば、自治体OSは不要になります。将来そうなる可能性も否定できませんが、弊社は、当面は、優位にたてるノウハウをもっています。

これは、プラットフォーム問題だと考えています。Linuxが普及するには、フリーのカーネルとX-Windowsシステムが必要でした。この2つを得て、Linuxは、ソフトウェアの開発プラットフォームになりました。2000年頃には、一時期、最強のプラットフォームと思われたマイクロソフトのWindowsとインテルのCPUは、スマホのOSとGPUにプラットフォーム競争で勝てなくなり、マイクロソフトは、Windowsに、アンドロイド(現在はAndOS)を組み込んでいます。グーグルは、クロームを通じて、WEBをプラットフォームに使う方法を模索し、それなりの成功を収めました。しかし、音声入力をプラットフォームにする点では、アマゾンに追いつかない状況が続きました。その後、プラットフォームのOSに、X-Windowsシステムのような画像インタフェースに変えて、バーチャル空間のインターフェースを標準装備する試みが進んでいます。しかし、文字入力以外をプラットフォームに追加する場合には、センサーのハードウェアの性能と価格が、成否を大きく左右します。このため、将来優勢となるプラットフォームを予測することは難しいのです。

プラットフォームの将来の落としどころがどこに来るかは、企業の生き残りに直結する重要課題なので、各社は、それなりの見通しをもっていますが、それは、トップシークレットになっています。弊社も、弊社独自の見通しをもっていますが、それは、企業秘密なので、ここでは、お話できません。

ただし、今までの実績を申し上げれば、プラットフォームの変化に、それなりに、柔軟に対応してきたつもりですし、その方針に今後も、大きな変化は無いはずです」
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