第33話 自然言語処理(NLP)と政党公約評価(2032年)

文字数 1,380文字

(NLPを使った政党公約評価の普及が、智子の政治活動を後押した)

智子は、政治活動を始めたころのことを思い出していた。

2020年頃から、SNSが、フェイクニュースを拡散することが問題になった。対策には、最初は、マイクロソフトが、独占ライセンスを取得した自然言語処理のAIモデル「GPT-3」がよく、使われた。その後、競合企業も、類似のアプリケーションを開発した。

これらの第1世代の言語処理モデルは、ニュースに使われているキーワードの種類、キーワードの頻度、キーワードの組合せに注目して診断を行う。

しかし、この手法は、現実のリアルの世界で、何が起こっているのかに関係なく、判別モデルを作成している。

機械学習するデータは、フェイクニュースとフェイクでないニュースに識別されたデータセットを作成して学習させている。

問題は、機械学習用のデータの作成である。フェイクとは、ファクトに対応していない文章をさす。しかし、この定義には、問題がある。

1)照合用のファクトのデータセットの作成問題
ファクトのデータセット(正しいニュース記事)があれば、単語の判別ではなく、ニュースの命題の正否が判断できる。間違った命題は、当然、フェイクになる。
過去の実績(ファクトのデータセット)は、評価の基準である。経済成長を公約にあげても、過去の実績が伴わない場合には、それは、フェイク公約の可能性が高いと判断される。

2)将来の予測文章に対する評価
フェイクニュースは、過去のニュースに対する評価である。将来起こること、例えば、明日、富士山が噴火して、日本沈没になるという命題はニュースではないが、天気予報と同じように、信頼性の確率評価はできる。
この将来の予測に対する評価は、カルト対策では、不可欠である。

3)芝麻信用のように、発言者を評価する方法もある。つまり、
ニュース(発言者、命題)のセットである。
このデータとリンクすることで、判別関数の精度を上げることができる。
これらの問題に対応した第2世代の自然言語処理のAIモデル開発が、2025年頃に進んで、2030年には、各党の公約に、信頼度評価スコア、実現可能性スコアがつけられるようになる。

例) A党、消費税を5%にする。発言の信頼度 XA%。実現可能性 YA%。
   B党。最低賃金を引き上げる。発言の信頼度 XB%。実現可能性 YB%。

政見放送をテレビで流すときには、各発言に対応した信頼度、実現可能性が、字幕で表示されるようになった。

有権者は、フェイク公約ではない確率を参考に、投票するようになった。

智子が、政治活動を始めた時は、新人で実績は、ボランティア活動しかなかった。

今までの政治システムでは、実績のない新人が、評価を得るには、それなりの経験と時間が必要だった。

しかし、NLPを使った政党公約評価が導入された結果、状況は大きく変化した。

NLPを使った政党公約評価は、政治家個人ともリンクが張られており、個別の公約を誰が発案したか、担当者は誰かがわかるようになっていた。このリンクを逆に集計することで、各政治家の公約への寄与度がスコア化され、政治家が、実行力(影響力)、信頼度、公約の達成率などで、評価されるようになっていた。

こうして、智子は、政治活動を始めて1年足らずで、最も、影響力があり信頼できる政治家ランキングの常連になった。
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