第4話 バックキャスト条件(2035年)

文字数 1,475文字

(自治体OSの販売に関する制約条件が明らかになる)

鈴乃木が口を開いた。

「できれば、これから、自治体OSのご説明をしたいのですが、その前に、確認しておくべき事項があります。
それは、最後のシステムの運用能力に関する問題です。

自治体OSは、DXシステムと自治体経営コンサルタントの2つの部分から構成されています。

ベンダーは、DXシステムを販売すれば、それで、仕事は終わりです。

経営コンサルタントは、改善計画書を作成して、仕事は終わりです。

どちらの場合も、販売したものが、問題解決に、どの程度役立ったのかという数字を公開していません。

プロジェクターの画面をご覧ください。

これは、弊社の全てのカスタマーの1年後、3年後、5年後の計画達成率をしめしています。

丸い点は、契約継続時のデータ、バツ印のデータは契約中断時のデータです。つまり、弊社とご契約いただいた場合、契約中断にならなければ、計画以上の達成ができる確率は、70%です。達成率の中央値は、120%を越えています。平均値ではなく、中央値を使っているのは、自治体の規模が大きく異なるためです。これが、弊社の実績です。

自治体OSは、人間でいえば、病人に対する医療行為のようなものだと考えています。

DXシステムを売るベンダーは、市販薬のようなもので、DXシステムを正しく使ったか、効果が出たかは、チェックしません。

経営コンサルタントも、経営改善案のレポートを提出するだけで、そのあとは、カスタマーの判断にまかせられています。人間ドックの健康改善レポートのようなものです。

しかし、自治体OSを必要とする自治体は、財政破綻の手前にあります。処置を間違えば、財政破綻してしまいます。このため、弊社では、自治体OSの効果を常に検証し、必要な改善を随時行って、効果の数字を公開しています。自治体OSは、EBDX(Evidence Based DX)なのです。

EBM(根拠に基づく医療)の典型は、ガン治療で、5年後まで、1年毎の生存確率を計算しています。プロジェクト画面の弊社の実績は、EBMを参考にして作っています。
生存曲線は、単調減少で、減少速度が小さくなる、すなわち、生存率が上がれば、治療法に効果があったと判断できます。

DXで、縦軸に自治体の生存率を描くと、DXを入れて効果があった場合には、減少が止まります。破綻確率が減少します。

生存率の減少を止める方法は1つではありません。事前に何が正解かはわかりません。EBMでは、優先順位を決めて、効果の大きな薬から、順番にテストします。

複数の薬をテストしながら使用するのは、患者によって、効く薬が異なることと、よく効く薬は副作用も大きいためです。

DXの効果が、期待したほど出なかったり、副作用が大きかったりしたときに、迷い出して、対策がとれなくなるとアウトです。自治体OSは有効に働きません。そこで、弊社は、自治体OSが有効に働く条件整備がなされていない自治体とは、ご契約しない方針です。

対策がとれなくなる原因は、現状から、将来を予測するフォーキャストに縛られているからです。問題を解決するためには、出口から、対策を逆算するバックキャストが必須の条件です。もちろん、バックキャストで作成した対策が、効果がない場合もあります。その場合には、通常2から3か月を区切って、失敗と判断して、別のDXに切りかえます。この変化のスピードがないと失敗から立ち直れません。

バックキャスト条件については、ご契約の前に、最終的に、確認させて頂きますので、最初に、その点をお断りしておきます」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み