第19話 質問;三権分立と自治体OS(2035年)

文字数 938文字

(智子が、三権分立と自治体OSについて質問する)

智子が口を開いた。

「建前と本音というものがあります。

家を建てるときに、設計図を引く人と、図面に従って工事をする人がいます。

政治では、設計図を引く機能は、議会にあり、図面に従って、公的サービスをするのが行政です。

しかし、これは、建前です。

実際の議会には、建築図面のような細部にわたる設計をする能力はありません。

議会で議論しているのは、絵コンテレベルの図面で、実施可能な図面の作成は、行政が行なっています。

行政が、この実施可能な図面を引くときには、判断が必要な場面が多々あります。

しかし、この判断は、三権分立で言えば、本来は、議会が行うべきものです。この境界は曖昧です。

この判断を行う場合、根拠となるデータ、エビデンスが十分にあれば、良いのですが、今までは、データ不足でした。

そうなると、過去の判断をコピーするヒューリスティックを採用するか、誰かが利益誘導型の判断をします。行政が、過去の事例にこだわるのは、その判断が正しいためではなく、ヒューリスティックであれば、責任を問われることがないためです。

一度、利益誘導型の判断が入ると、それも、ヒューリスティックの一部になります。こうなると、新たに、データが集まって、エビデンスに基づいて、判断を変更すると、既得権益が侵害されます。

DXが判断を行う場合には、データに基づいて、合理的なアルゴリズムを使うはずです。しかし、それは、既得権益の侵害になるので、DXを邪魔をしたり、それ以前の、エビデンスになるデータの収集や保存の邪魔をする人が出てきます。

簡単に言えば、DXによって不利益になる人は、2種類です。第1は、事務処理などが自動化されることで失業する人です。第2は、行政の管理職や、政治家で、DXによって、権益が侵害される人です。

企業の場合には、DXによって、利益が上がれば、リターン、所得も増えます。このため管理職は、今まで、自分が行なっていた判断がDXによって失われても、DXを促進するモチベーションがあります。

行政の場合には、DXを進めても、リターンが増えません。DXを進めるモチベーションがないのです。この問題は、自治体OSでは、解決できないと思いますが、解決可能でしょうか」

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