第12話 システム運用の人材(2035年)

文字数 2,011文字

(システム運用の人材について議論がなされる)

鈴乃木が、口を開いた。

「現在、自治体で働いている方の99%は、スキルが不足していて、自治体OSを使いこなすことができません。職員は一度全員を解雇して、スキルのある人を選んで、雇用しなおす必要があります」

「余剰職員だけを解雇する方法では、ダメだというのですか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「ええ、残った職員を再教育して、スキルを身につけられる割合は、過去の調査では、5%に過ぎません。つまり、95%は、適性がなく、使えるようになりません。また、現在の赤字自治体の多くには、職員の再教育で、DXに移行する時間的な余裕はありません。つまり、DXにおいては、DXに対応できない職員はやめていただき、失業中の再教育で、自分の適正にあった仕事についていただくことが、自治体にとっても、本人にとってもベストな方法です。

自治体の中の自治体OSの管理部門を考えてみてください。そして、考えられる最小人数は何人でしょうか。ひとまず、コストは考えず、弊社のサポート部隊が、無制限に使えるとしてみてください」鈴乃木が、言った。

「ゼロにはできないですよね」智子が聞いた。

「弊社の立場としては、お客様がゼロにしたいというご希望であれば、最大限それに沿うように努力します」鈴乃木が、言った。

「ああ。わかりました。セキュリティがネックです」智子が答えた。

「ええ。そうです。セキュリティに関わる情報がなければ、連絡窓口に、一人いれば、十分です。交替要員も考えも2、3人いれば良いわけです」鈴乃木が、言った。

「必要なセキュリティ要員の数は、どのように決まりますか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「それは、お客様のセキュリティ情報の量と質、それから、暗号化の方法によって決まります。

セキュリティ問題を、専門家に丸投げするつもりのお客様が多いので、困ります。他は、丸投げできても、セキュリティ問題は、丸投げできないのです。


弊社の自治体OSを導入する方法には、2つのタイプがあります。

タイプ1は、自治体の中に、専門家を置いて、自治体OSを管理する方法です。

タイプ2は、自治体OSの管理をアウトソーシングする方法です。

過去の自治体の仕事のやり方は、アウトソーシングの一方的な拡大です。アウトソーシングを推進した結果、自治体の中には、予算配分機能しか持っていない部署が多数あります。こうした部署の人件費は、行政システムを使うことで、99%カットすることが可能です。つまり、必要な職員数は、現在の100分の1です。5年後までには、行政システムが進化すれば、自治体に必要な職員は、消防、警察、教育などの現業部門を除けば、10人程度で十分です」

「2つのタイプで、どちらがお勧めなのですか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「弊社はOSを利用するサービスを販売しているだけで、どちらが良いかは、お客様のご希望に応じます。ただし、過去の実績では、タイプ1では、自治体OSを管理できなくなる事例が多く発生しましたので、弊社は、そうならないように、アフターケアサービスを行なっています。その内容には、自治体OSを動かすことのできる人材のスキル評価などの採用のアシストも含まれています。

過去2年間の販売実績では、タイプ1が、3割で、タイプ2が、7割です」

「実績が、異なる原因はなんですか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「コストの面、維持管理の容易さから考えれば、タイプ2がベストです。現業部門の職員数は、個別システムによって減らせます。自治体OSは、個別システムの効率を劇的に向上させます。その結果、人件費の劇的な削減が可能になります。財政赤字に悩む自治体は、当面は、人件費の削減を目標とします。しかし、人件費の削減が進むと、自治体がどこにあるのか見えにくくなります。これを嫌って、タイプ1を選ばれるお客様もおられます」

「人件費が減るのが問題なのですか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「ネットワーク上の集団意識の理論によれば、自治体の意思決定の共通部分は、自治体OSの上に構築されます。このため、自治体の組織には、これが、自治体であるという意識のうち、個別の部分しか残りません。社会がシンギュラリティに向かうとすれば、これは、必然なのですが、感覚的に納得できないお客様が多いのです。これは過渡的な現象ですので、弊社は、お客様のご希望に沿うことがベストであると考えています。

ご存知のように、自治体が、個別システムを本格的に導入して、職員の解雇を始めたのは、2030年頃からです。2025年には、世界的なEVの販売拡大がありました。エンジンが必要なくなり、大量の解雇が生じました。この時点から、市民の反発が強くなり、自治体も完全雇用を実現できなくなりました。さらに、自動車業界は、家電業界と似た構図になってきました」

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