第34話 システムの更新(2035年)

文字数 1,334文字

(鈴乃木がシステムの更新について、補足説明した)

鈴乃木が口を開いた。
「ここでシステムの更新について補足しておきます。自治体OS以外に、お使いの個別システムで、特に、非効率と思われるのは、政治システム、都市計画システムと環境保全システムです。この3つを新しいシステムに交換すれば、短期的には、各々で経費の10%はカットできると思われます。中期的には、その倍程度の効果が期待できます。

弊社は、自治体OSを販売するだけでなく、こうした、自治体のコストカットのコンサルテーションも行っています」

智子が聞いた。
「つまり、短期的、30%のコストカットが、中期的には、60%のコストカットが可能ということですか」

鈴乃木が答えた。
「はい。ただし、それには、職員の8割のカット、議員の9割のカットが前提です。また、税収減少に悩んでいる自治体が多いので、弊社の自治体OSの開発目標は、行政サービスの質をあげることです。コストカットは、結果としてついてきますが、システム開発の目標ではありません。弊社では、行政サービスの質と提供するシステムのPレベルは、関係が深いと理解しています」

智子が聞いた。
「Pレベルと人材の関係がよくわからないのですが」

鈴乃木が口を開いた。
「そうですね。人材は、Pレベルに対応している必要があります。例えば、『職員の8割のカット』というと一般には、8割がレイオフされて、2割が残ると考える人が多いのですが、それは、間違いです。残るのはPレベルに対応した2割の人材です。8割、2割は、雇用する人材の数を言うのであって、特定の個人を指している訳ではありません。簡単に言えば、100%の人を一度解雇して、2割のPレベルに対応した人材を新しく採用します。採用した2割の人材に、元の職員が含まれていることもありますし、含まれていないこともあります。元職員とそうでない人の間に差別はありませんので、この違いは問題ではありません」

智子が聞いた。
「仕事の継続性はどうなるのでしょうか」

鈴乃木が口を開いた。
「その点が、更新について補足している理由です。更新という言葉は、元のシステムに対する更新の意味で使われます。システムについてはその通りですが、システムが更新された時に、人員も継続すべきかは、別の問題です。システムの更新によってジョブのワークフローが変わった場合には、人員を継続することは、マイナスにしかなりません」

智子が言った。
「仕事の継続性は、更新されたシステムが担保するので、人員の継続性は不要であると」

鈴乃木が口を開いた。
「ええ。そういうことです。2025年くらいから、遅ればせながら、日本にも、ジョブマーケットが形成されてきました。ジョブマーケットに属していれば、転職しないことは確実にリスクになります。実は、正しく理解されていないのですが、レイオフされないことも、リスクになります。早めに、レイオフされれば、学びなおしの機会があります。次の、転職を考えると、早めにレイオフされた方が、生涯賃金が上がることも多いのです。問題は、公務員の世界が、最後まで、ジョブマーケットから取り残されていることです。また、最近では、兼業が当たり前になっていますので、状況は更に複雑です」

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