第7話 唐山自動車(2029年)

文字数 911文字

(唐山自動車で、リストラが進行した)

自動運転対応の高級EVのコンセプトデザインは結局ものにならなかった。
唐山自動車は、解体された。

新しく出来たアイリストミタは、価格競争では優位を保てた。しかし、それは、自動運転のついていない普及価格帯のEVの場合であった。

高級EVは、基本的に自動運転になった。世界の自動運転のEVは、SoCとOSを制し、3社が生き残り、それ以外のメーカーは、3社のいずれかの傘下になった。

これは、予想できたことだった。

スマホの黎明期には、いろいろなOSが乱立したが、結局生き残ったのは、アップルのiOSとグーグルのアンドロイドだけだった。市場のシェアは、アンドロイドの方が高く、多くのメーカーがアンドロイドOSのスマホを販売した。アンドロイドOSのスマホは、売れ筋の機種が頻繁に入れ替わった。スマホのアセンブリ・メーカーに参入するのは容易であったが、入れ替わりも激しかった。自動車もおなじ様相を呈してきた。アセンブリ・メーカーは利益を出せなくなった。利益が出る部門は、OSであり、メンテナンスやサポート部門になった。

今日から、この工場も、SoCを作っているボルタ社が運用することになった。
ここに来るまでに、唐山自動車では、目まぐるしく、レイオフが行われた。

智子は、人事を担当し、レイオフを伝える役目だった。
これは、精神的に辛い仕事だった。何度、怒鳴り込まれたか分からない。
しかし、その辛い仕事も、今日から解放される。
予定されたレイオフが終わり、レイオフ担当の人事課職員はいらなくなった。
今度は、智子がレイオフされる番だった。

これから、何をしようか。
まだ、具体的な計画はなかった。
智子は、お金にはならないが、レイオフされた人を支援するボランティアに参加するつもりだ。

智子は、そうでもしないと、自分が、精神的にもたないと感じていた。
やっと、レイオフを言い渡さなくても良くなる。
今までの罪滅ぼしに、レイオフされた人の人助けをしよう。
この計画は、人事課で、レイオフを言い渡している時から、予定していた。
将来、必ず罪滅ぼしをして、人助けをする、そう頭の中で念じていないと精神の安定を保てなくなるような気がしたのだ。


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