第17話 コーヒーブレイクの種明かし(2035年)

文字数 1,530文字

鈴乃木がコーヒーブレイクの種明かしをする)


鈴乃木が、口を開いた。

「これは、健康コーヒーシステムの一部です。
今、試食して頂いたのは、コーヒーとクッキーの協調プログラムです。コーヒーの状態に合わせて、クッキーを調整して焼きます。できたら、今度は、クッキーに合わせて、コーヒーのブレンドを微調整して、コーヒーを淹れます。もちろん、温度や、挽き方も調整します。つまり、コーヒーメーカーとクッキーメーカーが連動して、美味しいコーヒーとクッキーを淹れます。

コーヒーブレイクに健康コーヒーを試食して頂いたわけは、自治体OSの考え方を理解して頂くためです。自治体OSでは、複数のアプリが、コーヒーとクッキーのように連動して動作します。そのことで、サービスの質をあげ、コストダウンも可能になります」

「自治体OSの効果を体感してもらうために、コーヒーブレイクを利用したわけですか」智子が聞いた。

「はい。面倒なデータの引き渡しの話は、辟易する方も多いですから、ここは、体感して頂くことが一番だと考えています」鈴乃木が、言った。

「ところで、このコーヒーのどこが、健康なのですか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「健康コーヒーは、お客様の体調に合わせて、コーヒーを淹れます。コーヒー店に行く時に、入口で体温を測ることは普及しています。健康コーヒーでは、テーブルに備え付けの健康測定機を使うことが出来ます。機械は、体温以外に、体重、血圧、脈拍、血中酸素なども計測します。お客様は、スマホをかざせば、データを健康コーヒー提供の健康アプリに登録できます。健康コーヒーでは、気温、湿度、気圧などの気象計測もしています。これらは、コーヒーの淹れ方に影響します。コーヒーを淹れる時に、お客様の健康データと気象データを使います。塩分や糖分控えめ、あるいは、グルテンフリーにも対応しています。コーヒーとクッキーを召し上がったあとで、味について、タブレットのスライダーで、アンケートに答えて頂きます。アンケート結果で、次のご来店時に、コーヒーとクッキーの味を決めます。体調が、思わしくないと、食味が変化しますので、健康アプリのデータにもなります」

「つまり、コーヒーを飲みながら、簡易健康診断をしているわけですか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「プライバシーの問題から、提供頂いたデータレベルでの診断になります。詳細なデータをいただければ、それだけ、精密な調理ができます。実際に、常連の方ほど、詳しいデータを提供いただいていますし、一度、ご自分にフィットした味がわかると、他店ではコーヒーは飲めないと、おっしゃいます。
簡易診断ですが、毎週来店頂ければ、効果はあります」

「昔は腕利きのバリスタが行っていたことを、健康コーヒーシステムが、より正確に行っているわけですか」智子が聞いた。

「そうです。著名なバリスタに、健康コーヒーシステムが学習するデータを作る上で協力を願っています。バリスタに比べると、色のセンサーは、問題がありませんが、香りセンサーについては、まだ、追いついてはいません」鈴乃木が、言った。

「まだ、バリスタの方が美味しいということですか」智子が聞いた。

鈴乃木が、口を開いた。

「香りだけを取り上げればそうかもしれませんが、お客様の体調、好みなどへの対応では、健康コーヒーシステムは、バリスタを越えています。香りについては、センサーが不十分なので、パラメータの調整で対応しています。バリスタの仕事の一つは、ピアノの調律師のように、コーヒーメーカーのパラメータを実際のコーヒーの香りと味を見ながら、調整することです。契約したバリスタには、コーヒーメーカーを巡回して、調整してもらっています」
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