第19話 女官長の使命感
文字数 774文字
王宮に着いて馬車を降りたとたん、待ってましたとばかり、阿梨は女官たちに取り囲まれ、拉致されてしまった。
さすがに勇仁も勇駿も慌てて、
「姫さま!」
「長!」
後を追おうとするが、ルキアが立ちはだかり、
「ただ今より王女殿下のお仕度を始めます。殿方はどうぞ控えの間でお待ちくださいませ」
毅然とした態度で、ぴしゃりと宣言する。
宮廷女官長に気圧された二人は、すごすごと彼女が指示する部屋に入るしかなかった。
一方、阿梨は両腕をつかまれ、引きずられるように沐浴場へと連行されていく。
広々とした浴場は石造りで、大理石の浴槽には薔薇が一面に浮かべられている。
「さあ、王女殿下、まずは男のような服をお脱ぎになって」
ルキアの言葉と共に、四方から手が伸び、着ている服を剥ぎ取ろうとする。
阿梨は必死に抵抗するが、多勢に無勢である。
男だったら片っ端から投げ飛ばしてやるのだが、女官相手では荒技もできない。
「やめよっ、風呂くらいひとりで入れるっ」
「いいえ、そうはまいりません。沐浴の後は香油を使ったマッサージを受けていただきます。それから着付けと、お化粧と……」
腕まくりして張り切るルキアには理由がある。王女を迎えに行く前、セルト王子に両手を握られ、くれぐれもと頼まれたのだ。
「阿梨どのは少々変わった姫君でして……。あなただけが頼りです、ルキア女官長」
端正な顔に憂いを帯び、じっと自分を見つめる碧い瞳に逆らえる女など、マルバ中探してもいるまい。
使命感に燃えるルキアは、こほん、と咳ばらいをひとつすると、
「とにかく、今宵の宴のために王女殿下には最高に美しくなっていただかなくては。このわたくし、マルバ王宮女官長の名にかけて!」
さすがに勇仁も勇駿も慌てて、
「姫さま!」
「長!」
後を追おうとするが、ルキアが立ちはだかり、
「ただ今より王女殿下のお仕度を始めます。殿方はどうぞ控えの間でお待ちくださいませ」
毅然とした態度で、ぴしゃりと宣言する。
宮廷女官長に気圧された二人は、すごすごと彼女が指示する部屋に入るしかなかった。
一方、阿梨は両腕をつかまれ、引きずられるように沐浴場へと連行されていく。
広々とした浴場は石造りで、大理石の浴槽には薔薇が一面に浮かべられている。
「さあ、王女殿下、まずは男のような服をお脱ぎになって」
ルキアの言葉と共に、四方から手が伸び、着ている服を剥ぎ取ろうとする。
阿梨は必死に抵抗するが、多勢に無勢である。
男だったら片っ端から投げ飛ばしてやるのだが、女官相手では荒技もできない。
「やめよっ、風呂くらいひとりで入れるっ」
「いいえ、そうはまいりません。沐浴の後は香油を使ったマッサージを受けていただきます。それから着付けと、お化粧と……」
腕まくりして張り切るルキアには理由がある。王女を迎えに行く前、セルト王子に両手を握られ、くれぐれもと頼まれたのだ。
「阿梨どのは少々変わった姫君でして……。あなただけが頼りです、ルキア女官長」
端正な顔に憂いを帯び、じっと自分を見つめる碧い瞳に逆らえる女など、マルバ中探してもいるまい。
使命感に燃えるルキアは、こほん、と咳ばらいをひとつすると、
「とにかく、今宵の宴のために王女殿下には最高に美しくなっていただかなくては。このわたくし、マルバ王宮女官長の名にかけて!」