第10話 まだ磨かれぬ原石
文字数 519文字
セルトは苦笑いして、
「活発なのですよ。若い女性の身で、自ら水軍を率いていると聞いています。後宮の奥深く閉じこもっている姫君などより、よほど立派ではありませんか」
そんなものかのう、とつぶやく父に、
「阿梨王女はいわば、磨かれていない原石ですよ。磨き上げれば、美しい宝石となるはず。そうだ、王女がマルバに到着したら衣装を贈りましょう。とびきり上等で華やかなものを」
父と共に花々の間を歩き回りながら、快活な声を出す。
「豪華な衣装をまとい、髪を結い、化粧をしたら、どこの姫君にも負けない美しい乙女になるでしょう」
父王はいささか呆れたように、
「そなたも物好きじゃな」
わが息子ながらセルトは見目がよい。兄弟のうちでも、北方出身の王妃に似たのだろう。
金の髪に透き通った青い瞳。憂いを帯びた長いまつ毛。通った鼻すじは彫像のようだ。
セルトに恋い焦がれる娘ならごまんといるのに、想いを寄せる相手はよりにもよって、あの型破り王女とは。
「そう仰せになりますな、父上。わたしは本気でお慕いしているのですよ、あの王女殿下を」
自分にとって、さまざまな意味で──彼女はとても魅力的な存在だ。
庭園に咲いていた純白の薔薇を手折り、セルトは含み笑いを浮かべた。
「活発なのですよ。若い女性の身で、自ら水軍を率いていると聞いています。後宮の奥深く閉じこもっている姫君などより、よほど立派ではありませんか」
そんなものかのう、とつぶやく父に、
「阿梨王女はいわば、磨かれていない原石ですよ。磨き上げれば、美しい宝石となるはず。そうだ、王女がマルバに到着したら衣装を贈りましょう。とびきり上等で華やかなものを」
父と共に花々の間を歩き回りながら、快活な声を出す。
「豪華な衣装をまとい、髪を結い、化粧をしたら、どこの姫君にも負けない美しい乙女になるでしょう」
父王はいささか呆れたように、
「そなたも物好きじゃな」
わが息子ながらセルトは見目がよい。兄弟のうちでも、北方出身の王妃に似たのだろう。
金の髪に透き通った青い瞳。憂いを帯びた長いまつ毛。通った鼻すじは彫像のようだ。
セルトに恋い焦がれる娘ならごまんといるのに、想いを寄せる相手はよりにもよって、あの型破り王女とは。
「そう仰せになりますな、父上。わたしは本気でお慕いしているのですよ、あの王女殿下を」
自分にとって、さまざまな意味で──彼女はとても魅力的な存在だ。
庭園に咲いていた純白の薔薇を手折り、セルトは含み笑いを浮かべた。