第25話 輪を外れて
文字数 606文字
何曲か踊った後、二人は人々の輪から外れた。
「とてもお上手でしたよ。それだけ踊れれば、どこの舞踏会に出られても引けは取りません」
「セルトさまのリードが上手いせいでしょう」
優雅に微笑んでみせたものの、窮屈な靴で踊ったせいで足が痛くなってくる。
どうせならもう少し履きやすい靴を用意して欲しかったのだが、セルトの選択は見た目優先らしい。
セルトは阿梨の我慢など露知らず、
「庭に出て歩きませんか。ここは少々賑やかすぎます」
この靴でさらに歩けというのか……顔がひきつるのを懸命に抑える。
かといって適当な断りの理由も考えつかず、何となくセルトに誘われるまま、広間を抜け出す。
ドレスの裾を踏まないよう細心の注意を払いながら、阿梨はセルトに手を引かれ、庭園へと大理石の階段を降りていく。
所々に篝火の焚かれた夜の庭園は南国の花々の甘い香りが漂い、ひっそりと静まり返っている。
庭園の隅、ほとんど人目につかない場所に、茂みに隠れるように東屋 があった。
「どうぞ、こちらにお座りください」
足の痛みに耐えていた阿梨は座れることにほっとして、長椅子に腰を降ろす。
その姿を眺めながらセルトはほくそ笑んだ。
長椅子にはふかふかの絨毯が敷かれている。いざとなれば寝台代わりも使えるという趣向だ。
「とてもお上手でしたよ。それだけ踊れれば、どこの舞踏会に出られても引けは取りません」
「セルトさまのリードが上手いせいでしょう」
優雅に微笑んでみせたものの、窮屈な靴で踊ったせいで足が痛くなってくる。
どうせならもう少し履きやすい靴を用意して欲しかったのだが、セルトの選択は見た目優先らしい。
セルトは阿梨の我慢など露知らず、
「庭に出て歩きませんか。ここは少々賑やかすぎます」
この靴でさらに歩けというのか……顔がひきつるのを懸命に抑える。
かといって適当な断りの理由も考えつかず、何となくセルトに誘われるまま、広間を抜け出す。
ドレスの裾を踏まないよう細心の注意を払いながら、阿梨はセルトに手を引かれ、庭園へと大理石の階段を降りていく。
所々に篝火の焚かれた夜の庭園は南国の花々の甘い香りが漂い、ひっそりと静まり返っている。
庭園の隅、ほとんど人目につかない場所に、茂みに隠れるように
「どうぞ、こちらにお座りください」
足の痛みに耐えていた阿梨は座れることにほっとして、長椅子に腰を降ろす。
その姿を眺めながらセルトはほくそ笑んだ。
長椅子にはふかふかの絨毯が敷かれている。いざとなれば寝台代わりも使えるという趣向だ。