第21話 上品に
文字数 624文字
居心地悪げにしていた阿梨は、二人の視線に耐えかねたように下を向く。
「あまりじろじろ見ないでくれ。どうせ似合っていないのだろう」
感極まったという風に、勇仁は大きくかぶりを振った。
「とんでもない……お美しゅうございますぞ。そうしていると亡き母上によく似ておられる。ああ、できることなら真綾さまにもひと目、美しく成長された姫さまをお見せしたかった」
年を取ると涙もろくなると言うが、勇仁はうつむき、眼がしらを押さえている。
「勇仁……」
しんみりする勇仁のそばに行こうとして一歩踏み出したとたん、阿梨は見事にドレスの裾につまづいた。
「うわっ!」
「長!」
とっさに勇駿は手を差し伸ばし、転びそうになる阿梨を受け止めた。髪に飾った花の甘い香りがふわりと漂い、彼の胸が高鳴る。
「……だからこんな格好は嫌なのだ」
いまいましげなぼやきが、耳にすべりこむ。その口調はまぎれもなくいつもの阿梨で、勇駿を安心させる。
「王女殿下、もう少し上品にお歩きくださいませ。それにしてもお美しいですわ! きっとセルト王子もお喜びになられるでしょう」
場の微妙な空気にはおかまいなしに、ルキアの浮き浮きした声音が響く。
「何だってあの王子を喜ばせねばならんのだ。わたしは着せ替え人形ではないぞ……」
女官長には聞こえないよう、阿梨は恨みがましくつぶやいた。
「あまりじろじろ見ないでくれ。どうせ似合っていないのだろう」
感極まったという風に、勇仁は大きくかぶりを振った。
「とんでもない……お美しゅうございますぞ。そうしていると亡き母上によく似ておられる。ああ、できることなら真綾さまにもひと目、美しく成長された姫さまをお見せしたかった」
年を取ると涙もろくなると言うが、勇仁はうつむき、眼がしらを押さえている。
「勇仁……」
しんみりする勇仁のそばに行こうとして一歩踏み出したとたん、阿梨は見事にドレスの裾につまづいた。
「うわっ!」
「長!」
とっさに勇駿は手を差し伸ばし、転びそうになる阿梨を受け止めた。髪に飾った花の甘い香りがふわりと漂い、彼の胸が高鳴る。
「……だからこんな格好は嫌なのだ」
いまいましげなぼやきが、耳にすべりこむ。その口調はまぎれもなくいつもの阿梨で、勇駿を安心させる。
「王女殿下、もう少し上品にお歩きくださいませ。それにしてもお美しいですわ! きっとセルト王子もお喜びになられるでしょう」
場の微妙な空気にはおかまいなしに、ルキアの浮き浮きした声音が響く。
「何だってあの王子を喜ばせねばならんのだ。わたしは着せ替え人形ではないぞ……」
女官長には聞こえないよう、阿梨は恨みがましくつぶやいた。