第18話 王女殿下の不機嫌
文字数 475文字
港から王宮までは馬車で半日ほどの道のりである。
道中、阿梨はずっと不機嫌だった。
「これ、姫さま、そのようなしかめ面をなさいますな」
なだめるように声をかける勇仁に、
「確かに今回は謝罪のための訪問だが、いちいち着る物まで指図されたくないぞ」
足を組み、憮然として馬車の席にふんぞり返る。
「セルト王子の気遣い、よろしいではございませんか。でないと姫さまはいつものなりで宴に出るおつもりだったのでしょう」
「もちろんだ。この格好が一番動きやすいのだから。わたしは、ひらひらした衣装など好かぬ」
力説する阿梨は黒の立襟の長めの上着と脚衣、髪は高めの位置でひとつにまとめた、いつもの姿だ。
阿梨はどこにいても変わらなかった。羅紗の宮廷でも、水軍の船の上でも。
「さすがにそのお姿で宴に出られては羅紗国の面子にも関わります。せっかくの王子のご好意、今宵はあきらめて盛装なさいませ」
所詮、男にとっては他人事。
勇仁は、いともあっさり言ってのけた。
道中、阿梨はずっと不機嫌だった。
「これ、姫さま、そのようなしかめ面をなさいますな」
なだめるように声をかける勇仁に、
「確かに今回は謝罪のための訪問だが、いちいち着る物まで指図されたくないぞ」
足を組み、憮然として馬車の席にふんぞり返る。
「セルト王子の気遣い、よろしいではございませんか。でないと姫さまはいつものなりで宴に出るおつもりだったのでしょう」
「もちろんだ。この格好が一番動きやすいのだから。わたしは、ひらひらした衣装など好かぬ」
力説する阿梨は黒の立襟の長めの上着と脚衣、髪は高めの位置でひとつにまとめた、いつもの姿だ。
阿梨はどこにいても変わらなかった。羅紗の宮廷でも、水軍の船の上でも。
「さすがにそのお姿で宴に出られては羅紗国の面子にも関わります。せっかくの王子のご好意、今宵はあきらめて盛装なさいませ」
所詮、男にとっては他人事。
勇仁は、いともあっさり言ってのけた。