第20話 見知らぬ貴婦人
文字数 574文字
たっぷり三時間はかかっただろうか。
控えの間ですっかり待ちくたびれた勇仁と勇駿は、いい加減、本気で阿梨の身が心配になってきた頃。
部屋の奥の扉が開き、ルキアの満足げな声が響いた。
「お待たせいたしました。王女殿下のお仕度が整いました」
ルキアの後に続いてようやく阿梨が姿を現す。
「どうぞご覧になってくださいませ。あまりのお美しさに眼がくらみそうでございますよ」
何を大げさな、と失笑した二人はルキアの背後から歩み出た阿梨を見て、ぽかんと口を開けた。
「……姫さま? 本当に姫さまでございますか」
「当たり前だ」
返ってきたのは、女性にしてはやや低めの聞き慣れた声。
父と子はただあっけに取られて盛装した阿梨を見つめるばかりだ。
薄絹を重ねた純白のドレスは美しいひだで飾られ、ささいな動きにも柔らかく揺れる。
普段はひとつに束ねた髪はほどかれ、上の部分だけが結われて花飾りがつけられ、あとは豊かに背に波打っている。
足にはビーズで刺繍のほどこされた華奢な白い靴。上から下まですべてセルト王子の贈り物である。
きりっとした目もとは上品な紫の陰影がつけられ、唇には鮮やかな紅。
まるで見知らぬ貴婦人が眼の前に立っているかのようである。
控えの間ですっかり待ちくたびれた勇仁と勇駿は、いい加減、本気で阿梨の身が心配になってきた頃。
部屋の奥の扉が開き、ルキアの満足げな声が響いた。
「お待たせいたしました。王女殿下のお仕度が整いました」
ルキアの後に続いてようやく阿梨が姿を現す。
「どうぞご覧になってくださいませ。あまりのお美しさに眼がくらみそうでございますよ」
何を大げさな、と失笑した二人はルキアの背後から歩み出た阿梨を見て、ぽかんと口を開けた。
「……姫さま? 本当に姫さまでございますか」
「当たり前だ」
返ってきたのは、女性にしてはやや低めの聞き慣れた声。
父と子はただあっけに取られて盛装した阿梨を見つめるばかりだ。
薄絹を重ねた純白のドレスは美しいひだで飾られ、ささいな動きにも柔らかく揺れる。
普段はひとつに束ねた髪はほどかれ、上の部分だけが結われて花飾りがつけられ、あとは豊かに背に波打っている。
足にはビーズで刺繍のほどこされた華奢な白い靴。上から下まですべてセルト王子の贈り物である。
きりっとした目もとは上品な紫の陰影がつけられ、唇には鮮やかな紅。
まるで見知らぬ貴婦人が眼の前に立っているかのようである。