第15話 選んだ生き方
文字数 516文字
後ろ手に自室の扉を閉め、ひとりきりになると。阿梨は長椅子にどさりと腰を降ろし、ふうっと長く息を吐いた。
今の「海戦」で何人の者が命を落としただろうか。
海で生きていくのは綺麗事ではすまされない。ああしなければ、こちらがやられていた。
皆を守るため、降りかかってくる火の粉は払わねならない。
後悔などない。これが自分の選んだ生き方だ。
祖父の跡を継ぎ、水軍の長となる決意をした時から。とっくに手を汚す覚悟はできている。
と、遠慮がちに戸を叩く音がした。
「誰だ?」
「勇駿です」
阿梨は椅子の背もたれから身を起こし、どうぞ、と答えた。
「失礼します」
戸を開け、入ってきた勇駿は手に南蛮製の白いカップを持っている。
ふわりとよい香りが辺りに漂った。阿梨の好きな茉莉花 茶だ。
「ひと息つかれては、と思いまして」
礼を言いながらカップを受け取り、口もとに運ぶ。甘い花の香りのお茶が喉を潤していく。
美味い、と阿梨は微笑した。
「相変わらず気が利くな」
いつも感心するのだが、勇駿は細やかな気配りが上手だ。
今の「海戦」で何人の者が命を落としただろうか。
海で生きていくのは綺麗事ではすまされない。ああしなければ、こちらがやられていた。
皆を守るため、降りかかってくる火の粉は払わねならない。
後悔などない。これが自分の選んだ生き方だ。
祖父の跡を継ぎ、水軍の長となる決意をした時から。とっくに手を汚す覚悟はできている。
と、遠慮がちに戸を叩く音がした。
「誰だ?」
「勇駿です」
阿梨は椅子の背もたれから身を起こし、どうぞ、と答えた。
「失礼します」
戸を開け、入ってきた勇駿は手に南蛮製の白いカップを持っている。
ふわりとよい香りが辺りに漂った。阿梨の好きな
「ひと息つかれては、と思いまして」
礼を言いながらカップを受け取り、口もとに運ぶ。甘い花の香りのお茶が喉を潤していく。
美味い、と阿梨は微笑した。
「相変わらず気が利くな」
いつも感心するのだが、勇駿は細やかな気配りが上手だ。