第6話 騎士より強い姫
文字数 523文字
今、あの日と同じ光景が再現されようとしている。
近づいたところをしなやかな動きでかわされ、腕をつかまれたと思った刹那 、勇駿の体は宙を舞っていた。
とっさに受け身の態勢を取ったので、まともに地面に叩きつけられる事態だけは免れたものの、かなり痛い。
「大丈夫か?」
息ひとつ乱さず、自分を投げ飛ばした張本人が心配そうにのぞきこんでくる。
勇仁の眼は確かだった。
勇駿が守ろうと心に誓った小さな姫は、実に逞 しく……いや、すこやかに成長し、剣も弓も体術も護衛役である彼より強くなってしまったのである。
「賭けはわたしの勝ちだな」
痛みをこらえて立ち上がり、服の埃を払う勇駿に、阿梨がにっこりと告げた時。
「姫さま!」
阿梨を呼ぶ、聞き慣れた低めの声がした。見れば、がっしりした壮年の男──勇仁が急いでこちらへ向かってくる。
「お探ししましたぞ。このようなむさ苦しいところで何をしておいでです?」
「あ、いや、王都の再建に尽力している皆をねぎらおうと……」
まさか男たちに混ざって賭けをし、勇駿を投げ飛ばしたとは言えない。
「作業場など、姫さまがおいでになるような所ではございません」
苦虫を嚙みつぶしたような顔つきで言い放つ勇仁には、さしもの阿梨も頭が上がらない。
近づいたところをしなやかな動きでかわされ、腕をつかまれたと思った
とっさに受け身の態勢を取ったので、まともに地面に叩きつけられる事態だけは免れたものの、かなり痛い。
「大丈夫か?」
息ひとつ乱さず、自分を投げ飛ばした張本人が心配そうにのぞきこんでくる。
勇仁の眼は確かだった。
勇駿が守ろうと心に誓った小さな姫は、実に
「賭けはわたしの勝ちだな」
痛みをこらえて立ち上がり、服の埃を払う勇駿に、阿梨がにっこりと告げた時。
「姫さま!」
阿梨を呼ぶ、聞き慣れた低めの声がした。見れば、がっしりした壮年の男──勇仁が急いでこちらへ向かってくる。
「お探ししましたぞ。このようなむさ苦しいところで何をしておいでです?」
「あ、いや、王都の再建に尽力している皆をねぎらおうと……」
まさか男たちに混ざって賭けをし、勇駿を投げ飛ばしたとは言えない。
「作業場など、姫さまがおいでになるような所ではございません」
苦虫を嚙みつぶしたような顔つきで言い放つ勇仁には、さしもの阿梨も頭が上がらない。