第7話 男たちの歓声
文字数 467文字
先代の長が他界した時、阿梨は十五だった。資質は誰もが認めるところであったが、あまりに若すぎた。
次の長には先代の片腕だった勇仁を推す声が多かったが、彼は辞退した。自らは補佐役となり、阿梨を長にと推挙したのだ。
ちなみに、阿梨を「姫さま」と呼ぶのは勇仁くらいのものである。
他の者は姫だの王女だの呼ぼうものなら、本人に猛反発をくらうので、「阿梨さま」か「長」である。
本当は「阿梨さま」などという呼ばれ方も気に入らないのだが、呼び捨てにすると今度は勇仁が烈火のごとく怒る。
板ばさみになった勇駿は悩んだ挙句、「長」と呼ぶことにした。これなら誰からも文句は出ない。
腕組みしてしかめ面をしていた勇仁は、ようやくここに来た用件を思い出し、
「マルバ王国から書簡が届きましたぞ。すぐに王宮にお戻りを。勇駿、そなたもだ」
承知した、と答えると、阿梨は煉瓦の上に積まれた賭け金を一瞥し、
「今日の作業が終わったら、その金で皆で飲みにでも行くといい」
金貨一枚あれば、ここにいる全員で豪遊できる。
軽快に歩き出す阿梨の背後で、男たちの歓声が上がった。
次の長には先代の片腕だった勇仁を推す声が多かったが、彼は辞退した。自らは補佐役となり、阿梨を長にと推挙したのだ。
ちなみに、阿梨を「姫さま」と呼ぶのは勇仁くらいのものである。
他の者は姫だの王女だの呼ぼうものなら、本人に猛反発をくらうので、「阿梨さま」か「長」である。
本当は「阿梨さま」などという呼ばれ方も気に入らないのだが、呼び捨てにすると今度は勇仁が烈火のごとく怒る。
板ばさみになった勇駿は悩んだ挙句、「長」と呼ぶことにした。これなら誰からも文句は出ない。
腕組みしてしかめ面をしていた勇仁は、ようやくここに来た用件を思い出し、
「マルバ王国から書簡が届きましたぞ。すぐに王宮にお戻りを。勇駿、そなたもだ」
承知した、と答えると、阿梨は煉瓦の上に積まれた賭け金を一瞥し、
「今日の作業が終わったら、その金で皆で飲みにでも行くといい」
金貨一枚あれば、ここにいる全員で豪遊できる。
軽快に歩き出す阿梨の背後で、男たちの歓声が上がった。