第27話 王子の告白
文字数 756文字
「もう一杯、いかがです?」
グラスの中の赤い液体が減ってくると、さり気なく勧め、継ぎ足してくる。
口当たりはよいが、けっこう強い酒だ。気づかないうちに葡萄酒は身も心も酔わせてしまう。
篝火に照らされた阿梨の瞳が潤むのを、セルトは見逃さなかった。
阿梨が二杯目の葡萄酒を飲み干したところで、セルトはグラスを置き、ひざまずいて彼女の手を取った。
「セルトさま?」
不思議そうな表情を浮かべる阿梨を見上げ、
「お慕いしております、阿梨王女」
立ち上がり、顔を寄せて瞳を見つめる。
「どうかお笑いくださいますな。初めてお会いした時から、ずっとあなたに心惹かれていました」
そう告白すると切なげな表情で長いまつ毛を伏せる。
内心、完璧だ、とセルトは思った。
宴から外れて二人きり、葡萄酒の酔いも回っている頃だ。
セルトは余裕の笑みを浮かべながら、彼女がしなだれかかってくるのを待つ。
──が。
阿梨の反応は彼の予想を全く裏切るものだった。
「はあ……それはどうも」
素っ気なく答えると、自分で空になったグラスに葡萄酒を注ぎ、干し無花果 を口に放りこむ。
「ふむ、これは美味だな。この干し無花果は白瑛が好きそうだ。葡萄酒といい、羅紗国でも商いができるかもしれん」
セルトはあっけにとられ、ひとりごちる阿梨を見つめていた。
西方の国でも珍しい金髪碧眼に端正な顔立ち。マルバ王国きっての美男子と言われたセルトである。
本人も充分、美貌を自覚しており、女性の扱いは手慣れたものだ。
その気になって今まで落とせなかった女はいないセルトにしてみれば、阿梨のこの態度は理解不能で、もはや屈辱に近い。
グラスの中の赤い液体が減ってくると、さり気なく勧め、継ぎ足してくる。
口当たりはよいが、けっこう強い酒だ。気づかないうちに葡萄酒は身も心も酔わせてしまう。
篝火に照らされた阿梨の瞳が潤むのを、セルトは見逃さなかった。
阿梨が二杯目の葡萄酒を飲み干したところで、セルトはグラスを置き、ひざまずいて彼女の手を取った。
「セルトさま?」
不思議そうな表情を浮かべる阿梨を見上げ、
「お慕いしております、阿梨王女」
立ち上がり、顔を寄せて瞳を見つめる。
「どうかお笑いくださいますな。初めてお会いした時から、ずっとあなたに心惹かれていました」
そう告白すると切なげな表情で長いまつ毛を伏せる。
内心、完璧だ、とセルトは思った。
宴から外れて二人きり、葡萄酒の酔いも回っている頃だ。
セルトは余裕の笑みを浮かべながら、彼女がしなだれかかってくるのを待つ。
──が。
阿梨の反応は彼の予想を全く裏切るものだった。
「はあ……それはどうも」
素っ気なく答えると、自分で空になったグラスに葡萄酒を注ぎ、干し
「ふむ、これは美味だな。この干し無花果は白瑛が好きそうだ。葡萄酒といい、羅紗国でも商いができるかもしれん」
セルトはあっけにとられ、ひとりごちる阿梨を見つめていた。
西方の国でも珍しい金髪碧眼に端正な顔立ち。マルバ王国きっての美男子と言われたセルトである。
本人も充分、美貌を自覚しており、女性の扱いは手慣れたものだ。
その気になって今まで落とせなかった女はいないセルトにしてみれば、阿梨のこの態度は理解不能で、もはや屈辱に近い。