第24話 舞踏
文字数 684文字
人々は美酒と料理を心ゆくまで味わい、ひと段落ついた頃、広間の中央で音楽に合わせて男女が踊りだす。
セルト王子は阿梨に向かって手を差し伸べ、
「どうぞ、一曲、お相手を」
「わたくしは踊れませぬ」
阿梨が首を横に振ると、
「大丈夫、リードしてさしあげます。わたしに合わせて揺れていればよいのです」
柔らかな物腰での王子の誘いをむげに断るのも悪い気がして、阿梨は座っていた椅子から立ち上がった。
「さあ、わたしの肩に手をかけて」
言われた通り、そっと肩に手をかけ、二人は舞踊の人々の輪の中にすべりこむ。
セルト王子のリードは巧みで、もともと運動神経のよい阿梨は、苦もなく彼の動きについていく。
純白の衣装に身をつつみ、すらりと背の高い二人が軽やかに踊る姿は、人々の注目の的となる。
「ほう、なかなかお似合いの二人じゃのう」
酒の入ったグラスを片手につぶやく父の隣で、勇駿は無言で踊る二人の姿を眼で追っていた。
確かにどこから見ても似合いの二人だ。
豪奢な衣装をまとい、他国の王子と踊る阿梨は、船の上で走り回っている自分たちの長とは別人のようだ。
その華やいだ姿を見ていると、嫌でも思い知らされてしまう。
普段は同じように船に乗り、行動し、食事を共にしてはいるが、阿梨は羅紗国の王女なのだ。
いくら一緒に育ってきても、身分が違う。
想いは届かない。胸が灼けるように──苦しい。
その苦しさをまぎらわせるように、勇駿は手もとの強い酒を一気に飲み干した。
セルト王子は阿梨に向かって手を差し伸べ、
「どうぞ、一曲、お相手を」
「わたくしは踊れませぬ」
阿梨が首を横に振ると、
「大丈夫、リードしてさしあげます。わたしに合わせて揺れていればよいのです」
柔らかな物腰での王子の誘いをむげに断るのも悪い気がして、阿梨は座っていた椅子から立ち上がった。
「さあ、わたしの肩に手をかけて」
言われた通り、そっと肩に手をかけ、二人は舞踊の人々の輪の中にすべりこむ。
セルト王子のリードは巧みで、もともと運動神経のよい阿梨は、苦もなく彼の動きについていく。
純白の衣装に身をつつみ、すらりと背の高い二人が軽やかに踊る姿は、人々の注目の的となる。
「ほう、なかなかお似合いの二人じゃのう」
酒の入ったグラスを片手につぶやく父の隣で、勇駿は無言で踊る二人の姿を眼で追っていた。
確かにどこから見ても似合いの二人だ。
豪奢な衣装をまとい、他国の王子と踊る阿梨は、船の上で走り回っている自分たちの長とは別人のようだ。
その華やいだ姿を見ていると、嫌でも思い知らされてしまう。
普段は同じように船に乗り、行動し、食事を共にしてはいるが、阿梨は羅紗国の王女なのだ。
いくら一緒に育ってきても、身分が違う。
想いは届かない。胸が灼けるように──苦しい。
その苦しさをまぎらわせるように、勇駿は手もとの強い酒を一気に飲み干した。