第9話 庭園
文字数 424文字
「阿梨王女がこの王宮にお越しになるという話は本当ですか、父上」
マルバの王宮の庭園を散策していた父の姿を見かけ、セルトは近づいて問いかけた。
羅紗よりはかなり南に位置するこの国は温暖な気候で、王宮の庭は一年を通して香しい花々が咲き誇っている。
息子の質問に、いかにも、と恰幅 のよい父王はうなずいた。
「先だっての取引が遅れた詫びにやって来るとのことじゃ」
返答を聞いたセルトは青い瞳を輝かせた。
「それは嬉しい。王女殿下はこの王宮には、めったに来てはくださいませんからね」
セルトの言うように、交易でマルバを訪れても、阿梨はほとんど王宮には顔を出さない。
作法にうるさい宮廷など窮屈で仕方ないのだ。
普段の取引時には大抵、勇仁が名代として挨拶に行っている。
嬉しげな息子の様子に父は、
「意外じゃな。そなたはもっとしとやかな娘が好みかと思っていたが」
首をかしげながら言葉を続ける。
「あの姫はどうも元気が良すぎてのう。いつも男のような身なりをしているし」
マルバの王宮の庭園を散策していた父の姿を見かけ、セルトは近づいて問いかけた。
羅紗よりはかなり南に位置するこの国は温暖な気候で、王宮の庭は一年を通して香しい花々が咲き誇っている。
息子の質問に、いかにも、と
「先だっての取引が遅れた詫びにやって来るとのことじゃ」
返答を聞いたセルトは青い瞳を輝かせた。
「それは嬉しい。王女殿下はこの王宮には、めったに来てはくださいませんからね」
セルトの言うように、交易でマルバを訪れても、阿梨はほとんど王宮には顔を出さない。
作法にうるさい宮廷など窮屈で仕方ないのだ。
普段の取引時には大抵、勇仁が名代として挨拶に行っている。
嬉しげな息子の様子に父は、
「意外じゃな。そなたはもっとしとやかな娘が好みかと思っていたが」
首をかしげながら言葉を続ける。
「あの姫はどうも元気が良すぎてのう。いつも男のような身なりをしているし」