第6話

文字数 799文字

「確かにそれを担任の教師に訴えたこともしたんですが、僕にとってそれは儀式的なもので教師に期待していたわけでもなかったんです。だからあの数学教師が大げさに僕の話を聞いていた日も大していつもの日常と感覚は変わらなかったんですよね。特に何も変わらなかったし」
「やっぱり、学校ってあかんな」
「そう、なんですかね?」
「まぁ、今の学校システムは大人の保身と醜い言い訳のためにあるみたいなもんやしな」
「はぁ、それでもいじめられる方が悪いって意見もあるし」
「んなわけあるかいな。大体な人間なんて様子見て勝てると思えば調子に乗りよる。負けたら拗ねて終わるんや。兄ちゃんは調子に乗せてしもうたんやね」
「まぁ、で、起きれなくなったんです」
「ほう」
「確かに朝は苦手でしたよ。中学生になる前から朝は苦手でした。小学校高学年ごろになると休日は昼前まで寝てて、ゴソゴソと起き出す事が慣例でした。それでも何も問題なかったんです。でも、いじめの一件があったから急に親も学校も神経質になって」
「んで、面倒臭くなったと」
「はい。もう何か過敏に反応されるのも気持ち悪いし、そっとしておいて欲しかったんです」
「なるほどね。学校っちゅうところはやっぱりカスやな。あんなカス行かんでよかったんちゃうか?大体やな、生きていくんには覚えたらあかんもんも、忘れなあかんもんもあるのにやで、アイツらは覚えることばっかり教えくさって、肝心の忘れることを教えよらん。楽しいことなんか忘れっぽかったら何回も楽しめるのにのぉ。覚えろぉ、覚えろぉ。言いよるやろ?やっぱりカスやな」
 オッサンは切り捨てた。
「まぁ、ね」
 俺は思ったことをすぐ口にするこのオッサンに苦笑いを返すことしか出来なかった。
「まぁ、そんなこんなで五年間もダラダラと過ごしてきました」
「んで、今はどやねん」
「今もダメです。何だかネガティブなイメージが出てきてしまって。うまく対処できないんです」
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