第33話

文字数 754文字

「はぁ?」
間抜けな返事しかできない。突然何を言い出すのか?よく理解できなかった。
「いや、だから、一番危険な生物ですよ」
ようやく、話題の変更に気がついた。
「いや、なぜですか?というか、どうしたのですか。唐突に」
「いや、凄くお話がお上手だし、話題も面白い。きっと色んなことをご存知なのだろうなぁと思って」
男の手のひらが俺を指している。
「まぁ、危険生物といえば、サメとか、ライオンとかですかね」
「いや、サメなんかほとんど人間なんか食べたりしませんよ。サメに襲われる人なんて年間で10人もいないほどなんですよ。それにサメに襲われたとしても殆どが溺死。あんな映画みたいなヒトを食って栄養にする獰猛なサメなんていません。ライオンに至っては人なんか食べるわけありません。基本的にアイツらは猫のでかいものですからね。日永、寝っ転がってダラダラしてるやつです。それをバスの中から眺めて喜んだり、怖がったりですもんね。めでたいもんですよ。人間は」
「じゃあ、象とか?カバとかですかね。押しつぶされたらひとたまりもないでしよ」
「それは、確かにそうかもしれません。象に踏まれたとかかばに挟まれてなくなる人が多数いるって聞いたことがありますよね。確かカバに押しつぶされて殺される人間は年間に四百人程度いるみたいですよ。それも、自分からカバを狩りに出かけて返り討ちにあうんです。まぁ、バカですね」
男はカラカラと笑った。
「とはいえ、それほど多いとは言えません。最強ではないです。実はもっと身近な存在ですよ」
「人間を殺してるのは人間だとかそんな答えですか?」
「いえいえ、そんなチープな答えではないです。ヒトがヒトを殺すのは年間に四十万人と確かに多い。でも、そんなの比にならない」
「何なんですか?」
「実は、蚊なんですよ」
「蚊?」
「はい。蚊です」
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