第9話

文字数 770文字

「あのオッサンがなん億円の損失を会社に出してもうたとしてもワイにも兄ちゃんにもどーでもええ話やろ?そうやろ?それは、自分がおかした失敗もどーでもええっちゅうことに繋がるねん。」
「どういうこと?」
「だ・か・ら・どーでもええねんって!」
 オッサンが語気を荒げた。
「どうでもいいなんて、他人にはそう言えるかもだけど、自分のことなら言えませんよ」
「アホやな。自分のことも、どーでもええねんで。ええか、世の中のほとんどはどーでもええことやねん。自分がいじめられたことも、教師がまともに取り合ってくれなかったことも、朝起きれなくて勉強に付いてこれなくなってアホになったことも、良かったって思えることさえも時間が経ってみたら正確には覚えてへんやろ。つまり今の自分にはどーでもよかったことがほとんどやねん。そのどーでもええっと思えるまで時間がどれくらいかかるかやねんで。」
「いや、楽しかったことまでは忘れちゃダメでしょ」
「違うねんって。究極、楽しかったこともどーでもええねん。いちいち過去の栄光にしがみつくのも気持ち悪いやつやん。それやったら、毎日新鮮な気持ちで過ごせたほうが気持ちええと思わんか」
「でも、世の中には失敗とかしたら反省しろとか責任をとれとかいわれるでしょ。それは全部過去に起こったことについてじゃ・・・」
「たしかに、人間は生きてたら失敗するわな。でもな、責任と反省を求めるヤツにろくなヤツはいない。そんなもんは当事者がやりゃええねん。んで最後にどーでもええって思ったらええねん。そんなんとやかく言う奴とは一刻も早く距離を置いた方がええ」
「でも、ニュースとかワイドショーとかは政治家や経営者の不祥事とかが連日流されてます」
「知らん。そんなん、季節が変わったらみんな忘れとるやろが。つまりそれは一過性のもんやん」
「それって無責任じゃないですか」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み