金色の闇

文字数 4,868文字


【金色の闇】
登場作品:『 To LOVEる 』シリーズ
   (漫画:矢吹健太郎/脚本:長谷見沙貴)
本名:イブ
愛称:ヤミ/ヤミちゃん
性格:クール&シャイ
特徴:トランス能力
好物:たい焼き
趣味:読書
苦手:ニュルニュルした触手
CV:福圓美里

【設定】
 宇宙に名を馳せた凄腕の殺し屋であり、主人公〈結城リト〉の抹殺を依頼されて地球へ来訪したが「結城リトは悪党である」という依頼内容が虚偽であると知るや、その仕事を破棄する。
 その反面〝殺し屋〟としての矜持からか、以後はリトを〈抹殺ターゲット〉と定義して滞在し、そのまま地球の日常に溶け込んだ。
 しかし、本心ではリトの誠実な優しさに心惹かれ、また血腥い世界に生きてきた彼女にとって平穏な地球は〝かけがえのないオアシス〟にも感じられた。
 シャイな性格故にクールを装っているものの性根はガラス細工のように繊細で心優しい少女である。
 自在に部位(殊に髪)を他形態へと変身させる〈トランス能力〉を有し、それを用いた戦闘能力はシリーズ内でも最強レベルである。
 定番フレーズは「えっちぃのはキライです!」

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【考察論】
『週刊少年ジャンプ(以下、WJ)』にて連載されていたお色気ラブコメの金字塔『 To LOVEる』に登場するメインヒロインの一人でしたが、その不変的な人気の高さから続編『To LOVEる ダークネス』では前作のヒロイン〈ララ・サタリン・デビルーク〉の妹〈モモ・べリア・デビルーク〉と共にダブル主人公として格上げされました。

 前身は同作者〝矢吹健太郎〟の前作『BLACK CAT 』に登場したヒロイン〈イブ/愛称:姫っち〉であり、その人気の高さから本作へとスピンオフ転換された経緯にあります。故に根本的なキャラクター設定は『BLACK CAT 』での設定を『 To LOVEる』世界観に準じてアレンジ踏襲したものとなっており、前作のファンならニヤリとする演出も見られました。
 ちなみに〈ヤミ/イブ〉の戦闘能力の高さは『 To LOVEる』シリーズのみならず〈WJヒロイン〉内でも最強ランクに部類します。

 当時の〈姫っち〉人気は相当高く、それこそアニメ化される以前からエロ同人界で引っ張りダコでした。これは〝非アニメ化キャラ〟としては異例と呼べる現象です。
 その余韻もあってか〈ヤミ〉もエロ同人の定番人気キャラになっています……と言うか、作品性質上『 To LOVEる』自体がそうですがw
 また『BLACK CAT 』は深夜アニメとなる以前に集英社ドラマカセットブックとして商品化されましたが、この頃から〈イブ→ヤミ〉のCVは〝福圓美里〟嬢ですので、彼女の持ちキャラでもあります。 
 福圓嬢が演じたキャラとしては、最長の付き合いなのではないでしょうか?

 どちらも性格的には〝心を寂しく閉ざしたクールビューティー〟ですが〈姫っち〉の方は無垢な子供らしさに在り、対して〈ヤミ〉の方は〝少女〟の域に達しているせいか大人びた丸さに無くもありません。
 これもまた〈ハーレムエロス〉という作風に沿った変質でしょう。

 このように同一原泉のキャラクターながら〈ヤミ〉と〈イブ〉には微妙な差異が有ります。
 彼女を溺愛する筆者としては、そうした考察に夢想するのも、また〈萌え〉の楽しみ方なのです。
 って言うか、ヤミちゃんに触れている時間って幸せwww




「『 To LOVEる』が復活する?」
 この朗報を聞いた時、正直、驚天動地の大歓喜でした。
 大好きだった『 To LOVEる』が連載終了した時には、しばらく途方に暮れて悲嘆したものです。
 それこそ〈トリプルクロスカウンター(by『あしたのジョー』)〉と〈ウルトラタイガーブリーカー(by『タイガーマスク』)〉を同時に叩き込まれたかのようなショックでした。
 しかしながら、私はアニメ雑誌や他漫画雑誌は買わずにWJだけですので、はたして如何なる内容なのか……なかなか情報は得られませんでした。
 遅々とWJにて明らかになった続報で、なんと今回はモモと一緒にヤミちゃんが主役に格上げされていると知って大驚喜!
 大好きだった『 To LOVEる』が復活するだけでも嬉しいのに、まさかヤミちゃんが主役格上げなんて!(同時にララが主役からサブへと回された事もショックでしたが……)
 ですが先述の通り、私はWJオンリーですので本編は御預け……コミックス発売での再会を心待ちに焦れました。
 そして、ついにコミックス発売日!
 逸る気持ちで、ようやく拝見……
「エロッ!Σ( ̄□ ̄;)」
 うん『 To LOVEる』よりも〝エロさ 1.8倍増し(当社比)〟でしたw
 さすがに『 To LOVEる』大ファンの私でも、正直戸惑いましたね……「ここまで露骨な性描写に走ったら、ただのエロ漫画じゃないか!」って。
 ですが『 To LOVEる』……と言うか〈ヤミちゃん〉との再会はスゴく嬉しい。
 その想いだけで付き合い続けた結果、徐々に慣れましたw
 それに物語が進むに連れて〝 To LOVEるワールド〟は健在だと感じられるようになったのです。
 確かにエロい……露骨にエロ過ぎる……が、根底にある〝奥手な恋愛模様〟や〝繊細な心理機微〟は活きていて、殊にヤミちゃんの不器用な心情の描写にはファンとして読み応えのある掘り下げを感じました。

​ ちなみにTVアニメ版オープニングソング『secret arms(vo:Ray)』は、彼女のイメージを余す事無く歌い尽くした名曲です。是非聴いてみて下さい。




 続編『To LOVEる ダークネス』にて主役へと格上げされたヤミちゃんですが、本作では彼女の生い立ちに纏わる新規キャラクターが登場してシリアス面での展開に深味を持たせました。
 その中でも、とりわけ重要な存在であったのが〝妹〟たる〈黒咲メア〉でしょう。彼女は謎を孕むキーパーソンとして、序盤の物語に緊迫感を抱かせました。
 同等の〈トランス能力〉を所有しているメアは、ヤミの事を〝お姉ちゃん〟と呼び慕いますが、当のヤミには心当たりが無い……。
 更には〝無邪気且つ冷酷な暗殺者〟という側面もあり、かつての〝殺戮者としての世界〟にヤミを引き戻そうと画策します。
 地球の日常を愛し始めたヤミにとって、メアは〝唯一の姉妹〟である可能性と同時に〝危険分子〟でもありました。
 それは、あたかも〝過去の自分〟を思わせる写し鏡です。
 だから、ヤミはメアを倒……そうとはせずに、どうにかして平穏な世界へ招き入れようと模索します。
 それが〝現在の彼女〟の〈答〉なのです。

 このメアに〝日常の尊さ〟を萌芽させたのは、意外な伏兵でした。
 モモの双子姉妹〝ナナ・アスタ・デビルーク〟です。
 二人が親友となったのは日常の些細な一幕であり、ナナはメアの本性を知りません。
 同時にメアにとってもナナは素直に心許せる同年代の友達であり、特別な存在でした。
 しかし、ある時、ナナはメアの戦闘光景を目撃してしまいます。
 驚愕の真相を前に瓦解する信頼関係──。
 メアは平然の仮面を装って言い捨て去ります──「もう…終わりにしよ…? 〝友達ごっこ〟 兵器と人が心から通じあえるわけないもんね……」と。
 大好きな友達でいたいのに、どうしていいか分からない──普段は勝ち気なナナが見せた傷心の泣き顔は胸を締め付けられました。
 そして、なけなしの勇気を後押ししたのが、やはりリトです。
 彼の誠実な励ましを受けたナナは、メアの下へと駆けつけ──この展開は、是非自身の目で見届けて欲しい。
 感涙必至の感動エピソードです。
 『To LOVEる ダークネス』はモモ&ヤミの物語であると同時に、ナナ × メアの物語であったと言っても過言ではありません。

 そして、ヤミにも、かけがえのない大親友が存在します。
 結城リトの妹〈結城蜜柑〉です。
 蜜柑はリトと同じく〝平穏な日常〟へと繋ぎ止めてくれる大切な存在です。
 素直な自分を晒け出して、吐露や相談が出来る唯一の対象と言ってもいいでしょう。
 蜜柑を守るためなら、彼女は我が身を犠牲にする事さえも選択します。
 その一途で確固たる親近関係は〝メア&ナナ〟の関係と同質のものなのです。
 ともすれば、メアに友情が芽生えた事を一番祝福していたのは〝姉〟であるヤミちゃんだったのかもしれませんね。



 また、メアと共に重要な存在が、担任教師として赴任した〈ティアーユ・ルナティーク〉です。
 10代の頃にはバイオ工学を極めた天才であり、ヤミは彼女の遺伝子を以て造られた人造生命体なのです(その頃の名前は〈イブ〉であり〈金色の闇〉は後の生き方に於ける〝殺し屋稼業〟で付いた通り名に過ぎない)。
 つまり、ヤミにとっては〝実の母〟と呼べる存在であり、それ故に彼女の害となるものは断固許しません(御約束となっているリトのラッキースケベも〝自身へ向けられた時〟と〝ティアーユへ向けられた時〟とでは、怒り&殺意の度合いが格段に違いますw)。

 しかしながら、再会したヤミとティアーユには微妙な距離感の擦れ違いがあり、不器用な家族愛の行く末も『ダークネス』の魅力でした。
 尚、彼女もまた『BLACK CAT 』からのスピンオフキャラクターであり、基礎設定やスタンスは『 To LOVEる』世界観に準じたアレンジ踏襲されたものとなっています。ただし〝癒し系天然ドジ〟という萌え属性が付加されたせいか『BLACK CAT 』時代のシリアスな愁いは鳴りを潜め、代わりに柔和な母性が前面に打ち出されています。




 作品タイトルにもなっている『ダークネス』は、佳境にて真相が明かされます。
 それはヤミの〝真の姿〟とも呼べる形態〈ダークネス・モード〉の事でした。
 彼女は生体兵器製造を目的とした『ダークネス計画』の産物であり、そのデータを基に新造された第二世代が〈メア〉だったのです。
 この形態になったヤミは〝殺戮と破壊の化身〟であり、その圧倒的な戦闘力は単身で惑星を壊滅させてしまうほど!
 そして、性格も別人格化してしまいます。
 ところが誤算がありました。
 彼女の心底に強く刻まれた〝結城リトへの恋愛感情〟は心理的バグと作用して〝リトへの好意⇔性的欲求⇔固執的殺意〟という手に負えない暴走へと結実してしまうのです。
 そのため「えっちぃの大好き!」という〈淫乱殺戮者〉と化してしまいます。
 それだけなら滑稽な猥談で済みますが……その殺意と殺傷能力がシャレにならないガチなので、諸々の意味で〝アブナイ娘〟に仕上がっています。
 この〈ダークネス〉を如何に沈静化させて〈ヤミ〉を呼び戻せるかの攻防が、前半最大のクライマックスでした(TVアニメ版は、ここまでがゴール)。




 さて、綺麗事は申しません。
 私はヤミちゃんとは逆に「えっちぃトコが大好きです」で、この作品の大ファンなのですw
 しかし、それだけなら別に固執賛美などしません。
 って言うか、そんな欲求だけだったら最初から『18禁アダルト漫画』を買った方が早い。
 この作品には〝心をほわっとさせる等身大の優しい空気〟が根底に溢れています。
 現在、この作品の遺伝子はWJにて連載中の『ゆらぎ荘の幽奈さん(漫画:ミウラタダヒロ)』へと継承されていますが、やはり『 To LOVEる』とは微妙に異なります(どちらも大好きですが)。
 男性読者の〝ハーレムエロス願望〟を満たしながらも、繊細な少女心理の機微に彩られた恋愛漫画でもあり、おおらかなファジーSFでもあり、スラップスティックコメディでもある。
 ここまで多岐にわたる許容性の高い作品世界観は、あまり見ないのではないでしょうか?

 確かに〈ハーレムエロスラブコメ〉ではありますが、そうした表層的偏見を脱ぎ捨てて、いま一度〝少女心理の機微〟に着目して読んでみて下さい。
 そこには、きっと〝ふわっと優しい薫風〟が吹いています……。
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