総司令官コンボイ

文字数 10,772文字


【総司令官コンボイ】
登場作品:『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー』
作品DATA:1985.07.06~1986.11.07/日本テレビ系列/全74話
名前:コンボイ(海外名:オプティマスプライム)
所属:サイバトロン(海外名:オートボット)
役割:総司令官
変形:コンボイトレーラー
性格:冷静沈着/理知的
特徴:トランスフォーム/マトリクス
武器:ビームライフル/ビームアックス
CV:玄田哲章
備考:
 超ロボット生命体〈トランスフォーマー〉の故郷〈セイバートロン星〉では、正義の軍団〈サイバトロン〉と悪の軍団〈デストロン〉による抗争〈セイバートロン戦争〉が続いていた。
 その激戦の中で仲間を庇って瀕死の重傷を負ったサイバトロン青年戦士〈オライオン・パックス〉は、その勇気に感動したサイバトロン長老〈アルファートリン〉によって代々引き継がれてきたサイバトロンリーダーの証〈マトリクス〉を授けられ〈総司令官コンボイ〉として新生した。
 激化の一途を辿る〈セイバートロン戦争〉で、やがてエネルギー資源の枯渇傾向は深刻な問題となる。
 そして、サイバトロンリーダー〈総司令官コンボイ〉は仲間達と共に、新たな資源を求めて宇宙船〈アイアコーン〉にて大宇宙へと飛び立った。
 しかし、その情報をキャッチしたデストロンリーダー〈破壊大帝メガトロン〉は、すぐさま宇宙船〈メネシス〉で追撃を開始。
 航行状況下の乱戦中、両軍は太古の地球へと墜落し、乗組員である〈トランスフォーマー〉達は衝撃により機能停止状態となって永い眠りへと就いた。

 そして、現代──。

 休火山の噴火衝撃で宇宙船内のリペア装置が再起動し、地球の乗り物のデータを複写して〈トランスフォーマー〉達を復活させた。
 豊富なエネルギー資源を掌中に収めてセイバートロン星完全制圧の野望を実現しようとする〈破壊大帝メガトロン〉率いるデストロン軍団!
 そして、その野望を挫いて、セイバートロン星と地球の平和を守ろうとする〈総司令官コンボイ〉率いるサイバトロン戦士!
 いま此処に、地球の運命を賭けた〈トランスフォーマー〉の戦いが再開されたのである!

 尚、故郷〈セイバートロン星〉には、恋人である〈エリータワン〉という女性サイバトロンがいる。


※ 本コラムでは日本放映版に準拠して、各呼称は当時の日本版ネーミングにて表記しています。
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【考察論】
 私は『トランスフォーマー』オタです。
 過去形じゃないのは、現在でも新作テレビアニメとかを楽しんで観ているから。
 現役当時は玩具買いまくりで、トランスフォーマーコミケにも嬉々として行ってマニア交流していました。

 しかしながらハリウッド映画版は、あまり好きではありません。単なる〈SFガジェット〉と見なされている感が強くて、あまり思い入れたキャラクター愛を感じないので(トランスフォーマーでは一番重要な要素なのです)。
 だったら、同じ近年作でも子供視聴者目線を意識したTVシリーズの方がいいです(『ビーストウォーズ』とか『プライム』とか『アドベンチャー』とか)。

 私にとって『トランスフォーマー』は『マジンガーシリーズ』と並ぶ最高峰ロボットヒーローなので、久しく眠らせていた〈サイバトロン魂〉を復活させました。
 やはり〈コンボイ司令官〉は、私にとって〝永遠のヒーロー〟です。
 ちなみに、私は『ビーストウォーズ』シリーズまでは、本名の〈オプティマス・プライム〉では呼びません。
 憧れの〈コンボイ司令官〉です。


 本作は玩具メーカー〝タカラ(現:タカラトミー)〟が自社ブランド『ミクロマン』&『ダイアクロン』の変形ロボット玩具を、海外輸出戦略の意図で混合再構築した作品です。
 この『ミクロマン』『ダイアクロン』は共に非アニメ化作品であり、児童向けヒーロー雑誌『テレビマガジン』のグラビア連載にて展開していた作品になります。ロボット玩具の販売促進戦略がTVアニメ主軸である風潮に於いて、この異色性はかなりマニアックな魅力を触発し、子供達からも好感触な支持を受けていました。
 しかしながらシリーズが進むと、やはりTVアニメ作品に圧されるようになって玩具売り上げも低迷化。
 そうした劣勢を打開すべく起死回生の妙策と着眼したのは、まだ『ロボットアニメ』が市民権を得ていない海外でした。
 そもそもタカラは戦後当時から米玩具会社〝ハズブロー〟とは密接な契約関係にあり、フル可動兵隊フィギュアシリーズ『GIジョー』等を下請け販売していました。
 そうした伝からハズブローへ企画を打診したところ、この精密なロボット玩具の出来にハズブロー側が驚嘆。当時の海外玩具といえば〝大雑把な出来のヒーローフィギュア〟を主体としたコレクション商法が鉄板でしたから〝彫刻のような緻密さ〟〝一部とはいえ主要関節可動〟〝異なる形態への完全変形〟〝それらの要素を帯びながら掌サイズ〟〝コレクション性在りきよりも単体自体の完成度に高い商品価値が内包されている〟という日本産ロボット玩具は、まさに未体験のスゴさだったのです(余談ですが、そうした魅力に取り憑かれたマニアとしては〝スティーブン・スピルバーグ〟が有名で、彼は日本のロボット玩具を買い集めては自宅の趣味別館にコレクション展示しています)。
 この企画にメガヒットを予感したハズブローは、すぐさまマーベルコミック社へと打診して世界観新生とコミック展開を依頼しました。
 こうして生まれたのが本作『トランスフォーマー』であり、コミック刊行も好調で、続け様にアニメ化の流れになりました。
 この映像制作を下請けする事となったのが、マーベル社と提携にあった〝東映動画(現、東映アニメーション)〟になります(当時のマーベル社は日本市場への本格参入を目算していて、その提携パートナーに定めたのが国内最大手のヒーロー制作会社〝東映〟でした。そうした流れもあって日本版『スパイダーマン』が制作され、またスーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』にてマーベルヒロイン〈ミスアメリカ〉が登場したのです)。
 そして、本作は世界中で大ヒットとなり、一年後には日本に凱旋的逆輸入となったのです。

 しかしながら日本での扱いは、海外の好評価とは対照的に明るいとは言い難いものでした。
 近年ではハリウッド実写映画版が国際的メガヒットコンテンツと化したので本作を知らない人はいないと思いますが、日本初上陸時はイロモノ的扱いにアニメファンからもコケにされる風潮すらあったのです。
 こうした国内と海外の温度差は、偏に日本が〝ロボットアニメ大国〟であった点に起因するのでしょう。
 国内に於いて『ロボットアニメ』は星の数ほど存在し、また当時は『機動戦士ガンダム』に端を発する〝リアルロボットブーム〟の渦中にありましたから、王道路線の『スーパーロボットもの』ですら劣勢……海外アニメ感覚なファジーさの上に荒唐無稽なシンプルさの本作はチープなイロモノにしか映らなかったのでしょう(作画レベルも国産ロボットアニメより低いですし)。
 何せ怪我した仲間に救急車のトランスフォーマー〈看護兵ラチェット〉が「もう少し寝てれば治るよ」とか〈ロボット〉が言っちゃう世界です。そりゃ「これからは『ガンダム』みたいなリアル作風の時代だ!」とか酔ってる層には鼻で笑われる……けど、時代経過で科学が進化すれば〈ナノロボット〉で細胞修復を擬似的に再現できるという発想も生まれたワケだから不自然ではないし、だいぶ後年で『∀ガンダム』がやってる。
 ね?
 『SFガジェット』って、結局はそーゆーモンなのよ?
 だから「こんなんありえねーw」なんて一笑に片付けるよりかは、現行科学常識に捕らわれないで〝遥か先〟を見据えた自由な発想力を鍛えた方がよっぽど先見があって建設的……と、チト脱線www

 で、対して海外には『ロボットアニメ』は皆無でした。せいぜい『マジンガーシリーズ』『ゲッターロボシリーズ』といった『永井豪作品』を混合扱いしたシリーズ『SHOGUN』や、或いは『超時空要塞マクロス』『超時空騎団サザンクロス』『機甲創世記モスピーダ』という別作品を混合リミックスして再構築した『ロボテック』が人気を博していた程度で、つまりは日本作品による輸入放送しか存在していなかったのです。
 そうした中でアメリカ発の本作は、まさに『欧米人による欧米向けロボットアニメ』だった。
 当然、彼等を中心に大ヒットし、その熱は玩具販売戦略によって世界中へと飛び火しました。

 こうした背景の違いが温度差の原因とは思われますが、同時に当時の日本が国際的価値観に於いて、まだまだ鎖国的だった事実を立証しているかのようにも思えます。
 そして、これはやがて世界中で大ヒットした劇場版『トランスフォーマー・ザ・ムービー』が、日本だけ未公開扱いとなった遠因要素かもしれません(この『ザ・ムービー』は初作完結と次作第一話の両側面を担う重要エピソードであり、だから未公開の日本では次回作『トランスフォーマー2010』に繋がる設定が流布しないまま視聴者は「???」となってしまった)。
 ですが、こうした不当な情勢は日本国内に限られ、海外に於いては、やはり大ヒットを記録していたシリーズなのは揺るぎない事実なのです。
 当時の玩具市場売上は、あの〈Gショック〉を軽く凌ぐほどの利潤でした。
 先述の『トランスフォーマー・ザ・ムービー』に至っては『千と千尋の神隠し』の数倍にもなる億単位の制作費がアメリカ側から送られて来て、日本の製作スタッフが「こんなに貰っても使いきれないよ!」と送り返したという逸話まであります(それだけ勝負作品としての期待が高かった立証でしょう)。
 更には「こんな緻密なアニメが人の手で描けるワケがない! きっと日本人は最新コンピューターで製作しているんだ!」なんて都市伝説もwww
 このように国際的視点から見れば『トランスフォーマー』の方こそビッグメジャーであり、日本人が挙って熱中していた『機動戦士ガンダム』の方こそ局地的フィーバーなマイナー作品であったわけです(当時的には)。

 とはいえ、その唯一無二な作風の虜になった層が日本にいたのも事実で、また日本国内に於ける玩具売り上げも大好調でした。その人気に便乗してバンダイ(現:バンダイナムコ)が自社模倣シリーズ『マシンロボ』をアニメ化した事でも明らかです。

 つまり、実際には当時の一部層にあった『リアルロボット食傷気味になってきた&でも、昔のようなスーパーロボット路線にも懐古趣味だけでは素直にハマれなくなってきた』という堂々巡り的な閉塞感を打破したのも事実で、だから、いまだに第三勢力として熱狂的ファンも多いのです(私自身は『リアル』も『スーパー』も『TF』も同等に好きでしたが、そうした風潮があったのも事実なのです)。



 では、日本国内に於ける『トランスフォーマー』の魅力とは何であったのか?
 大まかに分けるなら、理由は三点に絞られると思います。

 ひとつめは『(何だかんだ難癖つけても)未体験の作風』であった事。
 要は『作風描写はあまりにも児童向けでファジー過ぎるのに、作品自体の設定は斬新』だったのです(まあ先駆けとして『ゴールドライタン』があるんだけど……何故か、みんな失念してたよねw ちなみに『ライタン』も大好きです)。
 何せ〈自律型変形ロボット〉が集団行動で「俺達が〈トランスフォーマー〉だ! 文句あるか!」と大手振って歩いていて、日本のヒーローと違って〝存在秘匿な隠密行動〟じゃない(ココが『勇者シリーズ』との差←でも『勇者』も好き)。
 平然と地球人を巻き込んで小競り合いなんか日常茶飯事。
 そして、どんな事件が起きても毎回プラマイゼロで『ふりだしに戻る』な展開を毎週ルーティーン。
 大河的流れなんか皆無なシンプルさ。
 当時は国産ロボットアニメが殊に『機動戦士ガンダム』の影響で『善悪二元論』から脱却して〝等身大なレゾンデートル的苦悩〟へと染まる中で『スーパーロボットもの』ですら影響に複雑化する傾向にありました。
 そうした状況下で、このとことん逆行した作風は新味にも感じられるものでありました。
 うん、物語もキャラクターも勧善懲悪も〝スパッと潔い作風〟だったのです。
 早い話、とことんアッサリ味www



 次に『全キャラクターが商品展開していた』という事。
 もちろん最初から、それありきで築かれた作品ですから、当然と言えば当然です。
 しかしながら『小者は言うに及ばず敵側まで同等の扱いに展開する』というのは、ありませんでした。
 先立って『ガンプラ』が在り、その影響下で『リアルロボットプラモ』は総じて敵味方問わず発売されましたが、これは〈兵器〉──つまり〈悪役〉と言えども〈悪役〉ではなく、純粋に〈マシーン〉だから成立したようなものです。
 ですが『トランスフォーマー』の場合は〝玩具=キャラクターそのもの〟ですから〈悪役〉は、あくまでも〈悪役〉です。〈デストロン軍団〉は何処まで行っても〝憎まれ役/やられ役〟であり〝パイロット如何で正義にも悪にもなる〟ではないのです。
 にも関わらず、主役同然に玩具展開される。それもコレクターアイテムの末端ではなく、立派に主力商品として(続編『トランスフォーマー2010』では国内販促キャンペーンとして『デストロンの逆襲』と銘打ってフラッグトイ〈プレダキング〉をメインとした展開をしましたが、この〝敵側主観で大々的に推す〟といったキャンペーンはサブカル史上、後にも先にもありません)。
 ぶっちゃけ『プラモデル』ではなく『低年齢層向け完成品玩具』ですから、決して安い物ではありません(現在は『プラモデル』が価格高騰化しているので同等価格ですが、この時代の『プラモデル』は 300~1000円台の安値によるコレクション性を売りに差別化していたのです)。
 こうした商法は『低年齢層向け完成品玩具』では前例が無いと言ってもいいでしょう(敢えて挙げるなら前身『ミクロマン』で多少の〈アクロイヤー軍団〉は発売されましたが、それ以外だと〈ウルトラ怪獣〉のソフビ人形ぐらいでしょうか)。
 これにより敵味方問わず〝自分が買ったキャラクター〟が劇中で描かれるのを一喜一憂する楽しみもあり、また、そのキャラクターを起点とした〝人間関係〟を買い揃える購入動機とも機能しました(所属部隊やライバル関係など)。
 このサブリミナル依存商法……もとい、コレクションに重きを置いた商法は、前身『ミクロマン』『ダイアクロン』──牽いては『GIジョー』や『リカちゃん』など──から引き継がれた〝タカラの御家芸〟ではありますが、実に絶妙です。
 そもそもロボット玩具という物は、それ自体が完成度勝負をしていますから、店頭一見でさえ〝このロボット、カッコイイから欲しい〟という動機誘発性は備えています。
 TV番組自体が〝PR映像〟ですから〝キャラクターのカッコよさ〟を刷り込んで魅力的に映えさせるのも鉄板です。
 そして、多くのキャラクター商品は、そこを武器に商戦展開するわけです(スーパー戦隊とか)。
 しかしながら、やはり『敵役に主役と同等の魅力を内包させて玩具を売り捌く』というのは前例がありません。
 玩具店に行けば『赤い箱(サイバトロン)』と『紫の箱(デストロン)』が等しく陳列され、その大量の積み並べから〝目的の御気に入り〟を探しだすのは何ともワクワクする楽しみもありました。

 ちなみに『機動戦士Zガンダム』が〈変形モビルスーツ〉を多々登場させた背景は、バンダイによる商業的『TF』対抗策だったそうです(それが事実ならば『あの超異端〈サイコガンダム〉は『TF』のフラッグトイだった〈合体巨神兵デバスター〉への対抗キャラクターだった』というTFマニア間の異説も信憑性を増します……何故、あのキワモノがリアル重視のガンダムワールドに出現したのかも理路整然と納得です)。
 意外と、裏では玩具会社の思惑対決がバチバチあったのですよ……この時代は完成品玩具商戦過度期だったからw
 恒例の『主役二体合体』も〈スーパーライブロボ〉と〈ゴッドジンライ〉の商業的対決から始まったものですしね。



 そして、最後にして最大の理由が『劇中でキャラクターを見事に立たせていた』という事でしょう。
 基本的に〝主役〟や〝準主役級〟或いは〝悪の帝王〟がスポットを浴びるのは当たり前ですが、この『トランスフォーマー』では比較的満遍なく全キャラクターに〝見せ所〟を演出しており、だから〝自分の買ったキャラクター〟の劇中描写を心待ちに楽しめる要素があった。
 実際、エピソード展開主観の主役的ポジションとなる〈バンブル〉は五百円商品の〈ミニボット〉です。
 それどころか「え? 今回のエピソードはコイツが主役なの?」的なチョイスも往々にしてある(名作『パワーグライドの恋』は、もはや伝説)。それも敵味方問わずに。
 これが日本産ロボットアニメなら、とにかく〈主役ロボ〉だけがオイシイ扱いに描かれますし、また玩具メーカーにしても「何はなくとも主役ロボを売り込みたい」という意向に染まっていますから、そうしたフォーマットこそが望まれる(好例として『マシンロボ』と比較されたし)。
 ところが『トランスフォーマー』では、例え〈五百円ランクのキャラクター〉であろうと〈数千円ランクのキャラクター〉であろうと〈敵役キャラクター〉であろうと同等の扱いで描かれる。
 しかも、端役登場であっても〝そいつらしい台詞や言動〟で、しっかりと〝個性〟を確立させていた。
 こうした粋な演出展開こそが、冒頭で述べた「キャラクター愛が、TFでは一番重要な要素」という裏付け。
 スタッフからも作品やキャラクターへの愛情を感じますし、何よりも我々ファン層を夢中にさせてくれた重要ファクターでもあったのです。
 だって、子供の小遣い程度で買った安値のトランスフォーマーですら、立派な登場人物の一端として〝活躍〟してくれるんですから、そりゃ愛着に嬉しくもなる。
 ただし、こうした公平要素は日本版では(やはり)踏襲されなくなり〈主役級〉や〈新商品〉にのみ比重を置かれる作風へと推移──再び〝満遍なくキャラクターを立たせる〟という作風演出が復活したのは国内TV展開最終作となる『トランスフォーマーV(ビクトリー)』で「ようやく」と言え、その遺伝子は翌年からの『勇者シリーズ』へと継承される形となりました。
 これは日本人向けの王道演出論だけによる処置ではなく、偏にキャラクター数が増え続けて飽和状態に在った背景も大きかったのでしょう。
 だから『トランスフォーマーV』では〝最低限のキャラクター人数に絞り込む〟という相関構成が為されて成立──その製作ノウハウは『勇者シリーズ』にて更にブラッシュアップされました。


 向かうところ敵無しで大好評だった『トランスフォーマー』ですが、第二作目『トランスフォーマー2010』にて打ち切り終了という憂き目に遭います(一応、作品としてはキチンと最終回を迎えていますが)。
 この背景を知っているのは当時のTFオタぐらいで一般認知されていませんが……実は御膝元のアメリカで〝PTA団体の猛圧力によって打ち切りへと追いやられたから〟なのです。
 日本では考えられないでしょうが、海外に於いてこうした団体圧力は相当な実践的威力を振るい、だから悄々と折れるしかなかった。
 理由は〝前時代的価値観の大人達には異端な有害作品にしか映らなかった〟から──平たく言えば〝前時代的価値観の押し付け〟です。曰く「こんな暴力的な作品は戦争賛美の価値観を子供に植え付ける」「玩具を売り込むだけに作られた俗悪な作品」「子供はディズニーとかだけを観ていればいいんだ」という……余計な御世話だコンニャローwww
 色眼鏡な懐古房が「現在の作品なんか、昔の作品に比べてたいした事無い!」って、後続世代に独善価値観を押し売りしてるのと同じじゃねーか!
 ま、実際は『露骨な商業意向在りき』こそが最大の敵視理由で、あとは難癖でしょうけどね。
 日本では『マジンガーZ』以降「玩具売り込みなんて百も承知ですが何か?」ですけど、米国では前例が無い。前例が無いものは(何にしても)飛躍しすぎた難癖に叩かれる風潮にある(国内でもあった事象です……『北斗』とか『ストⅡ』とか『セラムン』とか『エヴァ』とか)。
 が、ハズブロー&マーベルにとっては、然程の痛手ではなかった(だから折れる選択も出来た)。
 何故なら海外に於ける核は『アニメ』というよりも『マーべルコミック』だったから。
 コチラが健在なら充分〝玩具PR〟は出来たワケです。
 ところが、日本はそうではない。
 やはり『TVアニメ』こそが最大の商業戦略主軸ですし、何よりもこれでは問題起点となった『ミクロマン時代』へと逆戻りです。
 そこでタカラは東映とタッグを組んで『日本オリジナルシリーズ』を展開……それを機に〝より日本の子供受けするような作風(王道ヒーロー性の強調など)〟へと方向転換を試みます。
 当時から『日本版』はコアな層から叩かれる風潮にありましたが、こうした背景を鑑みれば致し方無い処置なのは明白です。だって〝何はともかく玩具が売れなきゃ意味がない〟んですから。それともタカラに「指をくわえて潰れろ」と?www

 そうした日本版も『ザ★ヘッドマスターズ』『超神マスターフォース』『トランスフォーマーV』を経て終了。
 翌年からは『トランスフォーマーV』で培ったノウハウを反映した『勇者シリーズ』が主軸となりますが、これにもまた裏事情が真しやかに噂されています。
 そもそも何故、類似企画の『勇者シリーズ』が立ち上がったかというと、この頃の『トランスフォーマー』は求心力を失っていたからです。
 各作品〝ある程度〟は善戦したものの、年々支持率は低下の一途でした。
 起死回生と入れ込んで製作された『トランスフォーマーV』は、かなりの完成度に好感触ではありましたが、やはり『トランスフォーマー』というブランド自体が、もはや商業的威力を喪失しつつあったのです。
 ですが『トランスフォーマーV』──とりわけ主役〈スターセイバー〉のキャラクター性は長らく追求してきた〈王道スーパーロボットとトランスフォーマーとの融合像〉として高水準で完成されており、そこには確実な手応えを感受していた。
 そこで足枷にすら墜ちていた『トランスフォーマー』というブランドに見切りをつけて、新たなブランドとして『勇者シリーズ』を企画したというワケです。
 しかし、此処にも興味深い『TF都市伝説(真偽不明)』がマニア間では囁かれていました。
 実は、当時のタカラは『トランスフォーマー』を完全に切るつもりは無く、主軸を『勇者シリーズ』に推移しつつも副次的コンテンツとして継続させる意向だったというものです(実際、翌年の『勇者エクスカイザー』スタート時期には『トランスフォーマーZ(ゾーン)』がパイロット的な単巻 OVAとして発売されています)。
 ところが、この両天秤姿勢に東映が激怒──「ウチと長年やっていた企画を他社に持ち込むなんて、どういうつもりだ! やるなら『トランスフォーマー』か『勇者』かどちらかに絞れ!」と強いたそうです。
 そして、タカラは低迷していた『トランスフォーマー』よりも、新しい可能性として『勇者シリーズ』を選んだ──と。
 あくまでも真偽不明な噂ですが、私的分析では、かなり真実味は高いと思っています。
 というのも、この背景なら何故『トランスフォーマーZ』がパイロット的な単巻 OVAとしてだけ発売されて続巻展開が為されなかったかも納得ですし、何よりも後年の日本版『ビーストウォーズ Ⅱ』『ビーストウォーズ・ネオ』『カーロボット』が〈葦プロ〉製作、『スーパーリンク』『ギャラクシーフォース』が〈ウィーブ〉製作と、悉くTF女房たる〈東映〉ではなかった事にも説得力があるからです。
 まぁ〈TFオタ〉としては口惜しいものの、客観的に見て正しい英断だとは思っています。
 当時、あのまま『トランスフォーマー』を続けていたら破綻にジリ貧倒産していてもおかしくはない。
 ちなみに一般的には知られていませんが、この『トランスフォーマーZ』を契機に主展開は児童雑誌『テレビマガジン』のグラビア展開へと移行し『Z』『ザ★バトルスターズ』『合体大作戦』と計三年続けてシリーズ終了──奇しくも末期は『ミクロマン商法』へと逆戻りとなりました。

 日本版では作品毎に〈主役司令官〉が変わりますが、海外では基本的に〈オプティマスプライム〉で一貫しておりシーズン毎に新商品へとヴァージョンチェンジしているだけです(マーベル版では一時期不在期間もありましたが)。
 しかし、日本版では毎作〈総司令官/主役〉は交代制となります。
 そして、最後の総司令官となったのは国産オリジナルキャラクター〈スターコンボイ〉──スーパーロボット然としたデザインで復活した〈コンボイ司令官〉でした。
 同時期にて海外では変形能力を喪失したアクションフィギュア〈アクションマスター・オプティマスプライム〉と化し、日本では電動モーターで余すこと無く動力ギミック性を売りとした〈パワードマスター・スターコンボイ〉と新生──奇しくも両キャラクター共〈異端進化を遂げたコンボイ司令官〉でありました(しかも異端変質の設定が『未知の超エネルギーを取り込んだ影響』と、これまた同理由というのが面白い偶然合致)。
 この対比、海外着想では〈変形〉という前提要素から逃げた感もありますが、対して国内では逆に〈変形〉の新しい可能性に正面から挑んだ感にありました(パワードマスターの着想原点が『ミクロマン』の大ヒットキャラクター〈ロボットマン〉というのも、またグッとくる)。こうした比較分析も実に興味深いものでした。

 と、気付けば文字数 10000越え……ヒーローコラムでも最長級となってしまいましたか。
 本当は、もっと〈コンボイ司令官〉自体に触れた内容を綴る予定でしたが、いつの間にか『トランスフォーマー』そのものの考察論になってしまいましたね。申し訳無い。
 まぁ、それだけ〝特異性に満ちた作品〟という事なのですよ(一般認知されていない裏事情も多いですしね)。
 仕方無い。
 今回綴れなかった考察は、また別の機会があれば……。
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