マンイーター

文字数 8,509文字


【考察論】
 今回は便宜的に〈マンイーター〉としていますが、実際には原典となる〈オードリー Ⅱ /旧作版名:オードリージュニア〉を主体に取り上げていく事となります。
 何故か?
 そもそも〈マンイーター〉は〈オードリー Ⅱ 〉を〝版権フリーダム化共有怪物〟として『テーブルトークフィーバー期』にてリファイン創作された模倣モンスターだからです。
 少なくとも〈マンイーター〉を始めとした〈自律型食人植物モンスター〉は、ホラーコメディ映画『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ(初作:『The Little Shop of Horrors』1960年作品/リメイク版:『Little Shop of Horrors』1986年作品)』に登場した〈オードリー Ⅱ 〉を廉価リファインした存在であり、だから基礎特性はまったく以て〈オードリー Ⅱ 〉以外の何物でもありません(多くの場合は〈ハエジゴク風異形〉すらも)。
 敢えて差異点を挙げるならば〈マンイーター〉の方は廉価版なので〝SFモンスターではない〟〝高度知性や自我は欠落している〟〝雑魚なので比較的容易に倒せる〟といったところでしょうか。
 一方で原典となる〈オードリー Ⅱ 〉は、こうはいきません。
 当人(?)が「俺は宇宙から来たグリーンの悪 ♪ 」とミュージカルに嘯いているように、実はかなり強力にして強烈なモンスターです。
 〝高度知性&自我は欠落している〟なんてトンでもない!
 コイツほど自己主張の強いモンスターは他にいないでしょう。
 歌うわ悪態つくわ悪知恵は舌を巻くほどだわ……映画未観の人にはピンと来ないかも知れませんが、モンスターオタからしたら間違いなく〈怪物界のスーパースター〉なのです。
 植物だから移動できないのがウィークポイント……と思いきや、リメイク版映画では蔦を器用に使って支柱掴みに移動します(電話すら掛ける)。
 そして、これまたリメイク版の没エンディングでは街を破壊するまでに巨大化……もう手に負えません。

 と、先行情報ばかり書いてしまいましたが、そんなこんなで、まずは〈オードリー Ⅱ /オードリージュニア〉について綴っていきましょう。

 登場作品は知る人ぞ知るカルト映画の名作(にして怪作)『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』になります。
 監督は、あの〝B級映画の帝王〟こと〝ロジャー・コーマン〟大先生。
 この製作秘話も、その筋では伝説と化しているエピソードなので軽く触れておきます。
 まずコーマン御大は『血のバケツ』というホラー映画を撮っていました。で、これが予定よりもだいぶ早くクランクアップした上に予算もそこそこ余った。そこで「軍資金もロケ時間もあるし、もう一本撮るかぁ」と場当たり的に立ち上がった企画が本作『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』なのです(しかも撮影期間は二日というw)。

 ついでに本作ならではの雑学を、もうひとつ。
 万人が認知している大御所怪優〝ジャック・ニコルソン〟ですが、実は初作『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が本格的なデビュー作となります。
 当時の彼はディズニーアニメーターを辞めて俳優業にシフトしたばかりの無名新人でした。
 そこで出演したのが前身映画『血のバケツ』のモブ群衆。
 ですが、そうした〝その他大勢のひとり〟に過ぎない彼に〝何か〟を感じたのか、コーマン監督はジャックを呼び寄せると「次回作では君に〝名前のある役柄〟を与えよう」と約束したのです。
 こうして初めて演じた〝役〟が〝マゾヒストの歯医者患者〟でした。
 役としては単に笑いどころを担う〝コメディリリーフ〟に過ぎず出番も僅か……ですが、彼にとって初めての〝役〟はコレになります。
 この逸話はコーマン信徒には当たり前に知られていますし、他にも『巨匠監督フランシス・コッポラを輩出した』とか『ジョージ・ルーカスは、コーマンの通信講座で映画監督としてのノウハウを培った』とか諸々あります。
 そして、こうした〝後世の大御所〟へと無名時代に多大な影響を与えた事から、彼等はコーマンファンから〈コーマン門下生〉という俗称で括られているほどです(当人達の意向は別としても)。
 うん、一般認知度がマイナーなのに反して、実はスゴい人。
 ですが、本当にスゴいと思うのは、こうした〝普通では有り得ない偉業〟を諸々内包しながらも、コーマン自身はまったく重視しておらず傲っていないという点です。
 曰く「(ジャック・ニコルソンについて)確かに巷ではそう賛美されるけど、私自身は何とも思っていない。そうした流れがあったという事は、彼自身に〝光るもの〟があったという事だろうし、現在の彼の大成は彼自身の実力に依るものだ」
 ……カッコイイ。
 カッコイイし、これぞ〝巨匠たる人柄〟にして〝生涯映画人一筋〟といった威風です。
 よく「コイツは俺が無名時代に発掘したんだ! 俺に先見の明があったんだ!」と自己賛美を喧伝する映画監督とかいますけど、そうした方々には〈巨匠〉ぶる前にコーマン大先生の爪の垢を飲んで頂きたいものですw


 さて、この初作『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』はモノクロ映画で、だからコイツは結構古株のモンスターになります。
 元祖版では怪物名が〈オードリージュニア〉と命名されており、後年リメイク版にて〈オードリー Ⅱ 〉と改名されました。
 何故改名されたかは不明ですが、この〈オードリー〉とは陰キャ主人公〝シーモア・クレルボーン〟が恋慕しているヒロイン〝オードリー・フルクアード〟の名前から勝手に名付けものです。私的推測ですが、もしかしたら『ジュニア(子供)』という妄想的ニュアンスが倫理的に引っ掛かったのかもしれません(真相不明)。

 初作&リメイク版共にストーリーは同じです。
 気弱な青年シーモアが偶然手に入れた〝謎の苗木〟は、実は〝人間の血〟を養分とする怪物であり、彼は夜毎に自らの指を傷付けて血を与えていました。
 しかし、それも限界が来た中、彼は不慮の事故で殺人を犯してしまいます。
 途方に暮れて狼狽するシーモアは死体を隠蔽するために〈怪物〉へ喰わせてしまうのです。
 が、これで食欲増大した〈怪物〉は歯止めが利かなくなり〝人肉〟そのものを要求するまでに成長。
 毎夜、ドスの効いた怒声に「喰わせろ~~!」と喚く〈怪物〉に辟易しつつ、不本意ながらに従事する形で(時には〈怪物〉に催眠術を掛けられてまで)シーモアは殺人餌付けを繰り返してしまう羽目へと陥ります。
 彼にしても苦悩の日々です。
 確かにシーモアは陰キャではあるものの〝人のいい気弱な青年〟というだけであり、また、この〈怪物〉を忌避しながらも同時に〝飼い主としての愛着〟もある……そうした諸々の柵から〝負のスパイラル〟へと堕ちていってしまうのです。
 ちなみに、この物語プロットは前身映画『血のバケツ』そのままと言ってもいい同一フォーマットで、つまりはストーリー自体も流用という事。
 どちらも『気弱な主人公が不慮の殺人を隠蔽しようと裏工作した事から連鎖的な自滅フラグへと陥る』というプロットですが、殺人動機を〝売れない創作家の自己葛藤〟から〝怪奇植物による強迫観念〟へと据げ代えて、それに伴い舞台を〝アトリエ部屋〟から〝花屋〟へと変更した作品が『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』になります。
 早い話が『サイコホラー』か『モンスターホラー』かの差ですね。

 で、この『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』ですが、基本的な骨子は新旧共に同じ……なものの、作風方向性やラストへ向けた展開は大きく異なります。

 初作では連続殺人犯とバレたシーモアは破滅の階段を駆け上ります。
 やがてシーモアは警察より最重要容疑者としてマークされる事となりました。
 そんな中で、予てより予定されていた『新種植物の発表会』が開催され〈オードリージュニア〉が大衆へと公開される運びとなるのです。
 多くの物見観客を前に開花させていく怪植物──その大花の中核には〝喰われた人々の顔〟が!
 戦慄と恐怖に彩られた喧騒の中で、シーモアは警察から逃走!
 何とか巻いた彼は無人と化した花屋へと帰って来ますが、そこに居座る〈怪物〉は相変わらず「喰わせろ~~!」と飽食の要求に呻きます。
 自滅の苦悩の末に一矢報わんと、彼はナイフを片手に「うんと食うが良い!」と自ら〈オードリージュニア〉の口に潜り入る決断を選択したのです。
 ややあってヒロインのオードリーと母親も無人化した店内へ戻って来ました。
 その眼前で新たに開く大花……シーモアでした!
 彼の〝顔〟は吐露し続けます──「僕は悪くない……僕は悪くない……」と。

 このように、かなりブラックなオチです(この絶妙な忌避演出は寺沢武一の『コブラ』にても模倣されました)。
 ともすれば、俗に『ホラーコメディ』として謳われる本作ですが、初作の本質は『悪趣味ホラー』と呼んだ方が正解でしょう(百歩譲ったとしても『ブラックユーモア』です)。
 インパクト絶大で悪夢的なラストなせいで、映画評論筋からは「悪趣味だ!」と酷評バッシングの嵐ではあったものの、それが逆に呼び水となって大衆の好奇心誘発には大成功──結果的に低予算カルト作品ながらもスマッシュヒットとなりました。
 こうした『極限まで低予算に削った製作ながらも大衆好奇心を誘発したヒットによって高収益還元を狙う』という『ローコスト&ハイリターン』はロジャー・コーマンの御家芸とも呼べる製作スタンスであり、また自身が旨としている最重視項目です。ですから、彼はリメイク版に対して「予算3000万ドルなんて掛け過ぎだ。収益率が悪くなるだけ」とビジネスライクな酷評も述べています(斯く言うだけあって、初作予算は12000ドルだった)。

 また、こうした無二の作風に心酔した好事家層が自費出費上映会を各地で地道に行い、未体験層への布教活動した背景にも繋がります。
 そうした心酔層の中にはブロードウェイ運営者もいました。
 80年代当時のブロードウェイでは『CATS』が大成功を収める千秋楽──劇団長がプロデューサーへ「次は何をやるの?」と訊えば「次は『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』をやるぞ!」と珍答が!www
「これにはビックリしたよ……実はボクも『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は大ファンだけど、まさか『コレ』を演るなんて……」とは劇団長の苦笑談www
 しかしながら、この血迷った……じゃなくて奇抜な英断は、前代未聞の大フィーバーへと結実します。
 ミュージカル化によって陰鬱観をオミットしたポップさへと改訂されましたから『大衆娯楽』としては理想的なバランスに新生しましたし、また世代的に初作を知らない観客がほとんどでしたから〝未体験の斬新さ〟と機能したのです。
 斯くして米国は、まさかの『オードリー Ⅱ フィーバー』w
 当時のインタビュー映像にて「今日は家族サービスで来たのよ」と満面の笑みで語る母子の姿は、まるで〈夢の国のネズミ〉に会いに来たかのような微笑ましさです……〈食人植物〉なのにw
 ですが、このポップ感溢れるフィーバー映像と人々の好意的な反応は、コイツがスターダムに成り上がった事を立証する貴重な裏付けでもあるでしょう。
 間違いなく80年代に於いて〈オードリー Ⅱ 〉は市民権を得た〈モンスター界のスーパースター〉だったのです。

 そして、この異様な過熱が飛び火してリメイク映画化の流れとなります。
 ベースが『ブロードウェイ版』ですから、当然のように『ミュージカル映画』として製作され、また初作のような陰鬱観は排斥されてポップな作風に彩られているのが特徴です。
 そして、そのミュージカル作風の影響から〈オードリー Ⅱ 〉に『歌って踊れる』という高度性が付随しました。
 旧作の〈オードリージュニア〉も言語能力や悪知恵を備えてはいましたが、リメイクにより更なる発展進化を遂げた〈オードリー Ⅱ 〉には〝ブラックユーモアに満ちた性格〟が個性と付随され、とにかくよく喋る。
 ええ、そりゃもう饒舌にして狡猾。
 単に「喰わせろ~~!」だけではない。
 過去作はあくまでも〝(怪物に強迫観念を強いられたとはいえ)シーモア自身が自分で追い詰められていくフラグ〟だったのに対して、コイツは悪魔の囁き然と口八丁に誘導します。
 で、ヒロインであるオードリーにも魔手が及ばんとして、冴えない等身大主人公は奮起──邪悪な怪物と攻防を繰り広げて勝利します。
 この辺りのヒロイック性が初作との決定的な差であり、また『等身大の凡人主人公が奮起活躍して英雄になる』という80年代映画特有のカタルシスとも言えるでしょう。

 リメイク版にて〈オードリー Ⅱ 〉は大掛かりな〈アニマトロニクス造形物〉が撮影に用いられました。
 この〈アニマトロニクス〉とは80年代にフューチャーされた新鋭特撮手法であり、キグルミやバストアップ用造形物にメカニカルギミックを多数組み込んで〝本物の生物のような複雑な動き〟を同期的再現したものです。
 例えばリメイク版『ゴジラ』で作られたバストアップ造形物は〝滑らかにうねるような動き〟に加えて〝瞼の開閉〟〝顎の開閉〟〝頬肉変化による感情表現〟等が同期的に再現され、かなり高度な生物感を演出可能となりました。
 或いは『狼男アメリカン』を発端として乱立した『狼男映画』では特殊メイク特撮の一環として併用され〝口頭が競り上がる〟〝表情が獣然と豹変する〟等のギミックでリアルな変身描写を確立しています(コレが近年まで続く『狼男の変身シーン』として基礎となりました)。
 作品によって織り込む度合いは大小様々ですが、このように猫も杓子も〈アニマトロニクス〉に傾倒した時期があるのです(ある意味、現在の〈CG〉みたいな扱い)。
 ただ……私的に突っ込むならば「いや、昔から微々とあったけど、その呼称が無かっただけじゃん」とは思いますけど(例えば〝ウルトラ怪獣の口や瞼の開閉〟とか……定義的に解釈すれば〈アニマトロニクス〉以外の何物でもないじゃん?)。
 ロボットギミックを惜しみなく投入する手法ですから、当然ながら開発費は大きいものです……が、それを鑑みないで実行できた辺りがバブル期を物語っています。
 現在では〈アニマトロニクス〉という用語自体は死語化していますが、技術そのものは微細な箇所に限定する形で特殊メイク等と併用されています。もっとも現在では〈CG〉にて安価に再現可能となりましたから、やがては廃れて消滅する可能性も否めませんけれど。
 で、この〈オードリー Ⅱ 〉も〈アニマトロニクス造形物〉なワケですが、圧巻なのは、そのリモートコントロール操縦者の人数で、コレが約40人前後……昭和版〈キングギドラ〉がスーツアクター以外にも〝三つ首担当〟〝翼担当〟〝二尾担当〟〝飛行吊り上げ担当〟と細分化に受け持ち12人越えという単獣としては伝説的最多人数でしたが〈オードリー Ⅱ 〉はそれを優に越えました。というのも〈頭〉〈口〉〈触手〉〈葉〉といった各部位に対して3~4人がチームとして宛がわれており、例えば〈口〉なんかは単なる〝全体的な開閉〟だけではなく〝唇頭形状〟や〝口角〟等という更に細かい箇所で分担した作業となっていたから。滑らかにしなる触手も然り。
 そうした密な連携体制の甲斐あって劇中の動きは繊細且つ滑らかであり、現在鑑賞しても〈生物〉としか形容できない見事な仕上がりに成立しています。


 実は世代じゃない方も遠因的に〈オードリー Ⅱ 〉の功績には触れているはずです。
 インテリア玩具の定番『フラワーロック』が、それ。
 そもそもはリメイク版公開時のフィーバーにて玩具メーカー〈タカラ(現タカラトミー)〉が『オードリー Ⅱ 』として販売した音声センサー型インテリア玩具がルーツです。
 この玩具はホラーに疎い一般層や女子にも「キモカワイイ! 何コレ?」とそこそこ売れましたし、映画公開後もある程度のロングセラーとはなりました……が、やはり『映画フィーバー有りき』で売られたコンセプトですから徐々に下火にはなってきます。
 そこでテコ直しとして音声反応センサーギミックを流用したまま〝花〟へと変更したのが『フラワーロック』なのです。
 この商品をきっかけにして〈TaKaRa〉の玩具ギミックには〈音/音声反応センサー〉という新たな武器が加わり、それは『ヒーロー玩具』『女児向け玩具』等に於いてもセールスポイントの裾野を広げる意味で大きな貢献でした。
 ちなみにブロードウェイミュージカル版では『オードリー Ⅱ の苗木が大量出荷に流出される』というブラックなオチがありましたが、店頭にコイツ(の量産品)が出回って陽気に躍り、そのユーモラスな様に大衆が(よく正体も分からないまま)嬉々とする光景は……何か〝そのまま〟ですねw



 さて長々と原典〈オードリー Ⅱ 〉について語り倒したので、ボチボチ〈マンイーター〉としても綴りましょう。
 と言っても冒頭で記したように「著作権フリーのシェアモンスターとして〈オードリー Ⅱ 〉をリファインした廉価版」としか書きようがない……うん、困った。
 取り立てて『マンイーターならでは』という書くべき特徴が無いw
 同じリファインでも、まだゴジラ怪獣〈ビオランテ〉の方が書くべき濃さに在りますな。

 ちなみに一応誤解無きように書いておきますが〈植物怪物〉自体は古くから伝承に在ります。
 代表的なのは〝森の精霊〟である〈ドライアード(ドリアード)〉や〈アウラーネ〉辺りでしょう。我が国の妖怪にも〈木霊〉や〈樹木子〉等がいます。これらは基本的に〝森という聖域に害為す者に対しては排斥攻撃を仕掛けるが、基本的には中立スタンス〟という感じが主流であり、言い換えるならば〝森の守護精霊〟といった趣です。
 一方で〈マンイーター〉はベースがベースだけに常時〝攻撃的/敵対的〟であり、貪欲な捕食本能任せに襲い来る能動型モンスターとなっています。生態分類的に〈植物〉とされていますが実態的には〈肉食獣〉と同じで、形態としてもそれまでが〈精霊:霊的存在〉を本質としているのに対して紛れもなく〈生物:物質的存在〉です。
 これは〈植物型モンスター〉としては異端的革新でした。
 それまでの〈植物モンスター〉は(どちらかと言えば)〝消極的受動型〟であったのに対して、この〈マンイーター〉からは〝アグレッシブな能動型〟へとスタイル幅を広げました。
 ともすれば華やかさに欠けて敵役としてもイマイチ感に在った〈植物モンスター〉が、多くの〈奇獣モンスター〉と肩を並べるほどの驚異性と好奇心誘発を備えた進化にもなったのです。
 それ以前は幻惑的や魔法的な攻防が主観であったのに対してダイレクトな物理的抗戦に交える怪物となり、もはや「所詮は〈植物〉でしょ?」なんて軽視に構えられるような相手ではなくなりました。
 しかも『ゴジラシリーズ』の〈ビオランテ〉のような巨大怪獣にも特性継承されるのですから、立派に〈猛威怪物〉の一端です(コレは没版〈巨大化オードリー Ⅱ 〉の影響とも見て取れるのですが)。
 ちなみに脱線ながらに書いておきますが、実は〈ウルトラ怪獣〉には本項で語った〈精霊型/オードリー Ⅱ 型〉のどちらにも属さない〈独自スタイルの植物怪物〉が多々います(ケロニア、スフラン、ワイアール星人、バサラ、アストロモンス、マンモスフラワー……etc )。
 また〈物体X〉の異名で知られる〈ザ・シンク〉も、正体は〝植物が高度進化を遂げた宇宙怪物〟という設定です。
 他に〈ライダー怪人〉にも〈サラセニアン〉〈バラランガ〉〈トリカブト〉〈ドクターケイト〉〈サボテン怪人〉等が在りますね。
 認知度がマイナーではあるものの〈植物モンスター〉は、それなりにヴァリエーションが存在しています(日本の『怪獣怪人文化』の方が、海外の『ホラー文化』よりも多岐的な印象を受けます)。
 

 それにしても……改めて鑑賞しても〈オードリー Ⅱ 〉の見事な存在感には感嘆頻りです。
 もう〈実在生物〉と呼んでも過言ではないぐらいに、圧倒的な存在感を発揮しています。
 到底〈作り物〉である事すら失念させる存在感です。
 まさしく〝アニマトロニクスの最高傑作〟とは、彼〈オードリー Ⅱ 〉の事でしょう。
 時代が流れて新たな技術が発達すると〝それ〟を用いて過去の革新作品をリメイクする流れが必ずと言っていいほど生じます。
 そして、現在は〈CG〉主観の時代。
 この〈オードリー Ⅱ 〉は、ある意味、最も〈CG〉に向いているモンスターとも呼べます。
 はたして現代技術で如何なる進化を果たすのか……同時に、この〝有無を云わさぬ存在感〟を越えられるかどうか……仮にリメイク企画が立ち上がろうものなら、その辺りの新旧比較も期待して是非とも観てみたいものです。


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