ゴーレム

文字数 8,733文字


 神話やファンタジーのモンスターと誤認している人も多いかもしれませんが、この〈ゴーレム〉は〈ユダヤ教〉の口伝秘術『カバラ:生命プロセスや現世真理を解いた宗教奥義』の一端とも呼べる人造人間──ですから細分化的には〈宗教怪物〉という事になります。
 旧約聖書にて『始祖〝アダム〟は〈神〉が土塊から創造した生命』とされている事から、その御業を模倣再現しようと宗教賢者達が生み出した被造物が〈ゴーレム〉になります。
 その目的意識は『神の御業を習得する事で同等存在域まで自らを昇華する』という点にあり、ともすれば〈生命創造プロセス〉そのものを解明習得する事にあります。言い換えるならば、そもそも〈ゴーレム〉は〝プロセス仮想実験〟に過ぎないワケです。
 この動機は『カバラ』崇拝には珍しくも無く、例えば〈錬金術〉が〝不純物から金へと精錬しようとする目的意識〟や〈ホムンクルス:有機人造生命体〉〈賢者の石〉といった究極創造物実験に固執するのも、みな同じ理念に起因しています。

 この〈ゴーレム〉という名前はヘブライ語で『胎児』の意……と記述されるのが通説なのですが、どうやら正しくはヘブライ語にて『未完成のもの』という意(一説では『生命を吹き込まれる前の土塊人形状態のアダムも〈ゴーレム〉と呼ばれていた』とか)であり、そこに『胎児』や『蛹』の意が含まれているとの事(ウィキペディア参照)。
 だとしたら、どう考えても(先述『アダム説』も加味しても)本来の『未完成のもの』こそが正しい意としか考えられませんから、通説『胎児』は拡張誤認の流布定着かもしれません。

 概要的には、土塊(或いは〝泥〟という記載もある)を材料に魔術生成された愚鈍怪物で、創造主〈ラビ:律法学者〉の命令に忠実に従う──単刀直入に言えば〈ロボット〉の元祖と呼べる存在。
 伝承に於ける製造法としては〈ラビ〉が『祈祷してから断食を行い、土塊から泥人形を造り、神の名を語りかけると〈生命〉が宿る』と云われています。
 こうして生まれた〈怪物〉は知能が低く会話もできませんが、ある程度は人語を理解して命令に従い、異能特徴としては怪力無双を誇ります。
 ヨーロッパ圏に於いて迫害扱いされていたユダヤ人にとって、怪力と頑強を誇る〈ゴーレム〉は〝無敵の守護者〟とも捉えられ、顕現待望観にて長い間信奉され続けていたようです。

 また、活動状態の〈ゴーレム〉は額部にヘブライ語の呪刻印『emeth:エメト/真理』と書かれていて、ここから頭文字『e』を削除して『meth:メト/彼は死せり』とすれば土塊へと還ってしまうとされています。
 しかしながら多くのアーカイブでは、この説のみを取り上げる傾向にありますが、実際には多岐的のようですね。
 例えば後述〝イェフダ・レーヴ・ベン・ベザレル〟の〈ゴーレム〉の場合は、体内に〈セム/シェム・ハ・メフォラシュ:『旧約聖書:出エジプト記』の一部節を暗号的に複合記述した護符〉をセットすると活動し、取り外すと停止状態になる。
 或いは〝ソロモン・イブン・ガビロール〟なる人物が創造した〈女性型ゴーレム〉は、ロボット宜しく〝パーツ分解構造〟だったとの事。
 現在基礎情報と定着した『メト/エメト』という呪刻印形式は〝エリヤ・ベン・ソロモン〟の〈ゴーレム〉に用いられていたようで、何故か〝それのみ〟が通説化に扱われるようになったようです。

 そして、伝承に依れば、どうやら〈ゴーレム〉は〝成長〟をするとの事。
 これは知能面ではなく体躯的に……つまり徐々に巨体化していくようですね。
 例えば以下のような伝承があります──。
『ゴーレム創造に成功した術者がコレを破棄しようと考えたものの、成長し過ぎて額部文字まで手が届かなくなりました。
 そこで妙案を一考します。
「靴を脱がせてくれ」と命じて屈ませたのです。
 こうすればしめたもので、座高は手が届く範囲です。
 労せずして頭文字『e』を削除する事に成功しますが……途端に〈ゴーレム〉は土塊と帰し、大量の土砂に呑まれた術者は圧死してしまいました』
 この説話が『何』を訓示としているかは正直解り兼ねるのですが……或いは『生命創造の禁忌』を危惧して『そこへと踏み込んだツケ』を遠回しに警鐘しているのかもしれません。
 何せ『被造物創造』は〝神の意思に背く忌まわしき所業〟ですからね。
 この辺りは『フランケンシュタイン』が作品テーマと直球継承しているだけでなく『SF』という分野に推移しても『ロボット作品』の主軸に描かれる傾向に在り、ともすれば『科学発展と倫理の在り方』という不朽の命題と化しています。
 それは俗物娯楽たる漫画文化にても変わらず、演出論法こそ多岐的に変化すれど『鉄腕アトム』『鉄人28号』『人造人間キカイダー』『ロボット刑事』『マジンガーZ』『新造人間キャシャーン』等の『ヒーロー作品』でも継承されています(とりわけ『石ノ森ヒーロー作品』には主題に多い)。
 それはさて措き、この〈ゴーレム〉の〈成長〉という性質は〈無機質型人造生命体〉では面白くも稀有です。
 これが〝知性や精神面での成長〟では有り得ます(事実、後続の『ロボット作品』に於ける〈成長〉とは〝そこ〟です)が〈ゴーレム〉の場合は真逆で〝知性は停滞に在り、無機質製の器が物質的成長をする〟という点は、おそらく西洋怪物史でも唯一無二の性質でしょう。
 この辺りは(神話伝承縁のファジー形態としても)特異で、まさに常識や合理性を無視に自己主張する〈怪物/西洋妖怪〉としての奇々怪々な性質が顕著とも呼べるかもしれません。
 根本から常識合理性無視の〈日本妖怪〉ならいざ知らず(器物型妖怪〈付喪神〉というカテゴリーも在りますし)、現実的法則の縛りから大きく脱却しない〈西洋妖怪〉では珍しい気がします。



 サブカル映像史に於いてはドイツ作品のモノクロサイレント映画『巨人ゴーレム(1920年)』が最も有名にして代名詞……というか『映像化ゴーレム』としては〈原点〉です(実際には、それ以前にも『ゴーレム映画』はあるようですが、コチラは『ゴーレムに化けた男の短編喜劇』との事で、純粋に『モンスター映画』としては『巨人ゴーレム』からのようです……どちらにせよ私は未鑑賞w)。
 この『巨人ゴーレム』は『プラハのゴーレム伝説』を下敷にした物語になります。
 16世紀後半のプラハにてラビ〝イェフダ・レーヴ・ベン・ベザレル〟が、反ユダヤ主義の迫害攻撃からユダヤ人を守るべく創造した〈ゴーレム〉の伝承です。
 この〈ゴーレム〉は〈ヨーゼフ/ヨッセル〉と俗称され〈死者の霊〉を召喚できると云われていたそうです。
 その異能力の暴走や悪用を危惧して、レーヴは必ず安息日前日の夜(すなわち金曜日)には〈セム〉を外して〈ゴーレム〉を活動停止させていました。
 ですが、ある夜、レーヴは〈セム〉を取り除くのを失念してしまいます。
 そして、その失態を思い出すと〈ゴーレム〉が安息日を妨害する危惧に襲われて恐々となりました。
 はたして狂暴化に暴走した〈ゴーレム〉の口から、レーヴは〈セム〉引っ張り出す事に成功──結果〈ゴーレム〉は土塊へと還ります。

 この伝説を基に映画化されていますから物語骨子は概ね同じです。
 ただし『巨人ゴーレム』では、クライマックスにてレーヴが担う役割を〝純心な幼女〟に変更し、この娘がゴーレム胸部に据えられた〈ダビデの星:原典のセムに該当〉を抜き取ってしまったために土塊と還ります。
 また、ゴーレム暴走の原因を『レーヴの助手による悪用』として、大衆向け勧善懲悪を理路整然としました。
 私的感想に過ぎませんが、この『純心な幼女との邂逅が自身の破滅へと直結する発端』『観客に悪印象を誘発させる助手の存在』という構成要素は、後年の継承派生である映画『フランケンシュタイン(1931年/アメリカ作品)』にサブリミナル的に影響を及ぼしているようにも見受けられて面白い要素です。

 そんな『ゴーレム映画』ですが、本作品以外に『らしい作品』は無いようですね。
 私も近年C級ホラー『ゴーレム』というDVDを持っていますが「いや、コレ〈ゴーレム〉じゃなくて〈イドモンスター:登場作品『禁断の惑星』〉の砂悪魔版だろ」でしたものwww
 多くは『人造人間もの』だと近代的感覚に『フランケンシュタインもの』か『ロボットもの』がベースになりますからね。
 そうした中で呼称のみ流用されるケースもありますが……。
 例えばゾンビドラマ『君と世界が終わる日に』では、劇中ゾンビの総称として用いられました。
 まぁ、私的にこうした『ゾンビの我田引水(モンスターコラム『ゾンビ』参照)』には辟易しているのですが、このケースの場合は(容認したくはないけれど)あながち『的外れ』ではない。
 発祥や形態こそ異なりますが〈ゴーレム〉と〈ゾンビ:ブードゥーゾンビ〉の〝性質〟は非常に相似点が多いからです(とはいえ件のドラマでは〈リヴィング・デッド型〉ですから、そうなると全然異なるんですけどね?w)。
 両怪物共に〝魔術生成された使役怪物〟であり〝高度知性皆無な愚鈍怪物〟であり〝創造術者の口頭命令にのみ絶対服従〟という性質が共通しています。
 しかも、共に〈宗教怪物〉です(スタンスは異なりますが)
 しかしながら、やはり両怪物は大きな差異点にも在る。
 言わずもがな〈ゴーレム〉は〝土塊:無機質素材〟であり〈ゾンビ〉は〝死体:有機生体素材〟という事。
 この背景から汲めるのは〝材質云々〟という表層面だけではなく〝ゼロから構築された/もともと在る素材を再利用した〟というプロセス差異です。
 おそらく〈生成魔術〉の点から分析すれば〈ゴーレム製造〉の方がハイレベルであり、それを成す術者の技能も相当な手腕となるはずでしょう。
 極論〈ゾンビ〉の方は〝(死体ではなく)仮死状態者に催眠術洗脳を仕掛ける〟でも再現可能です(事実、そういう説も在る)。
 一方で〈ゴーレム〉の方は〝(通常概念ならば見当違いな素材から)ゼロから造り出す工程〟に在り、この〝ゼロから造り出す〟というのは相当な難度だからです。
 つまり〈ゴーレム〉の方は、やや〈錬金術〉的とも言え、だから同じく〈人造有機生命体〉での比較をするならば〈ゾンビ〉よりも〈ホムンクルス:錬金術に於ける生命創造奥義〉の方がバックボーン的に近しい気がします。
 実際のところ〈錬金術〉の究極目的は『生命創造のプロセスを解析習得する事』に在り、あくまでも〈金〉の精錬は〝そのプロセスを可視的にした実験〟に過ぎません。巷に流布する「楽して富を得ようとする成金思考の堕落者」というのは誤認であり、それは〈錬金術師〉を自称してパトロン貴族から金をせびていた山師の悪印象が独り歩きした蔑視評です(本当の〈錬金術師〉は〝知識探求者〟であり〝前時代化学者〟なのです)。
 そもそも〈錬金術〉のルーツを辿れば『カバラ』発祥に行き着きます。
 冒頭先述したように〈錬金術〉は『カバラの再現実験』という性質から立ち上がった実験重視学問であり、それを〝現実的合理性〟にて可視実験でプロセス解明しようとする最先端学問だったのです。
 ですから〝目的意識〟も〈ゴーレム思想〉と同じです。
 そうなると〈ゴーレム思想〉が〈ホムンクルス実験〉の根本に大きく影響を及ぼしている(或いは〈ゴーレム思想〉が現実的合理性重視によって変質した)可能性は高いと思っています。



 現在にて大多数の人達が連想する〈ゴーレム〉のイメージは〈ファンタジーモンスター〉と化した像でしょう。
 つまり〝重要アイテムや宝物を守っている最強ランクの門番怪物〟という印象。
 これは当コラム御馴染みの『サブカル影響変質』であり、それを及ぼしたのがこれまた御馴染みの『テーブルトークRPGフィーバー期』になります。
 このリファイン処置に於いては、まず〈ユダヤ教〉とは無関係な〈魔法生物〉と定義されました。従って〈宗教秘伝〉とは関係なく〈魔術師〉によって創造されます(この改訂は〝ややこしくなる宗教事情〟を警戒すれば当り前)。
 額部呪刻印の設定がオミットされているケースも少なくなく、多くは実戦にて破壊可能な障害排斥モンスターとして設定されています。
 この〈ファンタジーモンスター〉としての変質にて特異なのが〝使用素材によって多種多彩な〈ゴーレム〉が発生した事〟でしょう。
 基本的には伝承に沿って〝土塊〟ですが、この場合は〈ノーマル〉とされています。
 しかし、独自拡張から様々な素材から〈ゴーレム〉が作成可能とされ〝木〟〝金属〟果ては〝肉〟とヴァリエーションが増やされました。
 まず〝木〟を素材としたものは〈ウッドゴーレム〉とされ〝最も安価で生成魔術レベルも低いため増産性に長けるも、半面、パワーや巨駆等の脅威性は低く〈火〉には滅法弱い〟とされています。つまり〈火炎魔法〉で無双可能。
 一方で〝金属〟を素材としたものは〈メタルゴーレム〉とされ、通常の〈ゴーレム〉よりも高位であり、その脅威性も強力で完全無欠の恐るべき怪物と設定されている。
 最も異質なのが〝肉〟を素材とした〈フレッシュゴーレム〉で、これは明らかに〈フランケンシュタインの怪物〉を〈著作権フリーな共有モンスター〉としてファンタジー世界観に落とそうとしたものですね(ただ、まぁ、この場合だと「コレは〈フランケンシュタインの怪物〉じゃなくて、単に〈巨体型ゾンビ〉じゃね?」とか私的には思ったりして)。
 これらは〈ドラゴン〉〈獣人〉等と同じ変質で〝判り易い記号化〟〝多岐化派生による体系化〟そして〝万人共有のフリーダムモンスターとしての新生〟から来ています。
 ただやはり、あくまでも『ファンタジーゲームでの独自設定』という観念も強く、そうした意味では〈ドラゴン〉や〈獣人〉のようには流布浸透しなかった。
 この設定が反映されるのは概ね『ゲーム(コンピュータゲーム含む)』の範疇であり『物語媒体(漫画や小説など)』では本家の〈伝承型ゴーレム〉に準じるきらいが顕著として見受けられるように思います(例えば『うしおととら』とか)。

 さて、今回のテーマ〈ゴーレム〉に関しては、余りにも手持ち資料不足……というよりも『考察情報が重複した同レベルでしか記載されていない』ので、モンスターコラム史上過去最高にウィキペディアも活用していますw
 が、その中では「一般的なゴーレムは土(粘土)で作られるが、神話や伝説には石や金属で作られたものも登場する」とかも書かれており、長年培っていた自己分析論と大きく異なるので「んん?」と……「あれ? 〈メタルゴーレム〉や〈フレッシュゴーレム〉がゲーム文化発祥という解釈は間違ってた?」と、少々不安になったりして。
 ところが、よくよく読めば「ギリシア神話にて〈鍛冶神ヘパイストス〉によって作られた〈青銅巨人タロス〉も〈ゴーレム〉の一種と見ることができる」とか「小説『フランケンシュタイン』に登場する〈フランケンシュタインの怪物〉 を〝死体(肉)を素材として作られたゴーレム〟として紹介している資料もある」とか……いや、だから、それはオイラが『モンスターコラム』で散々主張している『(ゾンビの)我田引水』だってばよ!www
 それ言ったら『ロボットアニメ』は全部『ゴーレム作品』になっちゃうよ!
 『黄金戦士ゴールドライタン』だって『黄金戦士ゴールドゴーレム』に改題だよ!
 そもそも、この『フランケンシュタインの怪物=ゴーレム』論の出典を見てみれば『モンスター・コレクション ファンタジーRPGの世界:安田 均&グループSNE/富士見書房〈富士見ドラゴンブック〉』……バリバリ『テーブルトークRPGフィーバー期』に刊行されたデータファイル文庫本じゃねーか!
 持ってるよ! オイラも!www
 だからぁ、こういう『ウィキ誤認鵜呑み現象』が怖いんだってば!(『モンスターコラム:クァール/リィム人の項参照』)
 いやまぁ『拡張設定』を折り込むでもいいけどさ……オイラだって『モンスターコラム:クァール』の〈アナビス〉の項で展開しているし……だけど、その場合は『筆者による拡張解釈』または『フォロワー作品による追加設定』とかは明記すべき!
 でないと『本来の伝承』と混同されて『怪物史』自体が変質してしまう(オリジナルが喪失してしまう)。
 それは(妖怪&怪物を愛する者として)悲しい。
 やはり可能な限りは、まず『正しい像』から次世代に継いでいってほしいのよ(フォロワー設定の容認or否定云々という話ではなく……そこは個人的嗜好差だから別案件だし)。
 でないと〈ブードゥーゾンビ〉が〈人食いゾンビ〉として語り継がれて、本来の〝由緒正しい怪物像〟は歴史の潮流に忘却されてしまうもの。
 サブカル史に於いて大きな損失よ? それ?



 さて、ここらで少々イラストについて……。
 今回、念頭としたのは2点。

 ひとつは〝角石積み型〟にしない事。
 伝承では〈ゴーレム〉は〝土塊生成〟ですから〝角石構築〟ではない……し、それをすると〈スフィンクス〉臭が強くなりますから(或いは〈サンシャイン:『キン肉マン』〉や〈ゴーリキー:『バビル2世』〉でもいいけどw)。
 とはいえ(フリーイラスト商品として)絵面的な見映えは欲しいので「広義解釈で砂鉄や砂金はアリかな?」と色彩を定めました。
 結果、質感的に〈ゴーレム〉っぽさが無くなった……と猛省。
 それこそ、コレは〈メタルゴーレム〉ですよねwww
 描いている時は気づきませんでしたが……。

 もうひとつは〈ジャイアント・ロボ〉にならない事。
 私が〈ゴーレム〉を描く際には先述の古典映画『巨人ゴーレム』をデザインリスペクトに据えるのが工程定番なのですが、この『巨人ゴーレム』は(おそらく間違いなく)〈ジャイアント・ロボ〉の源泉(スフィンクスアレンジにしてはいますが)。
 『太陽の使者 鉄人28号』当時、横山光輝御大はインタビューにて「子供の頃に怖くて強く印象に残っている『フランケンシュタイン』や『巨人ゴーレム』が〈鉄人28号〉のイメージに落としてある」と言っていましたから。
 この述懐を深く汲めば御大の心底に強烈なインスパイア源泉と根差している事は想像に難くなく、ともすれば『鉄人28号』よりも後年に着手された同コンセプト『ジャイアント・ロボ』にて直球反映していたとしても不自然ではありません。
 なので差別化意識を敷かないと、どうしても被るw
 況してや〈凰太郎ヒーローWORLD〉には〈ロアゴレム:『魔戒戦隊エクスロア』〉という直球がいますからね。



 ウィキペディア記述によると「ゴーレムはしばしば傲慢の象徴として表される」との事で、なるほど、先述した持論のように遺伝子継承した『ロボット作品』に於いては『科学発展と倫理の在り方』が『不変の命題』として描かれるのは常です。
 その代名詞とも呼べる存在は、やはり直球遺伝子の『フランケンシュタイン』になるでしょう。
 この『フランケンシュタイン』こそ『そのテーマ』に対して真っ向がぶりよつと描かれた作品であり、またタブー的にも踏み込んだ名作です。
 ヴィクター・フランケンシュタインの〝前衛的野心〟は〝神への傲慢〟と同義であり、また〝それ〟に対する責任放棄こそが万事悲劇の全原因なのですから。
 そして、悲しいかな〈怪物〉は〈ゴーレム〉と違って〝感受性豊かな心〟を備えていた……より『生命創造』としては完全の域だったのです。
 まさに『フランケンシュタイン』こそは『ゴーレム伝説』の直球遺伝子にして拡張完成型と呼んでも差し支えないかもしれません。
 とはいえ、文学史的には『ファウストもの:ゲーテ文学『ファウスト』の類型派生』と呼ばれますから、はたして〝メアリー・シェリー女史〟が、どの程度『ゴーレム伝説』を意識していたかは疑問ですが(むしろ劇中にゲーテ文学『若きウェーテルの悩み』や宗教観念主旨『失楽園』を重要ファクターと提示している点を鑑みると、影響根幹は『文学』や『宗教観』であり『ゴーレム影響』は結果論的な合致のような気もします)。

 宗教観念的にも倫理的にも『生命創造』は最大級の禁忌でありながらも、貪欲な知識発展は〝それ〟を追い求める事を止めないでしょう。
 事実〈クローン技術〉は長らく『禁断技術発想:SF内に於いてだからこそ容認されるフィクション』とされながらも、部分的活用が生活背景レベルでも実現しています。
 無論、そこには多大な恩恵があり、そうした恩恵にて助かっている人は数多くいる……だから、一概な二元論で両断する方が短絡というもの。
 しかしながら反面、やはり〝負の側面〟が在る事を失念して溺れるのは大変怖い心理的堕落です。
 この難問に明答などありません(……し、そんな無責任論な正義面は嫌いです)。
 各々が〝自分なりに考察〟して〝自分なりの答〟を見出だすしかない。
 つまりは〝自分〟を確固と育む事でしょうね……肝心なのは。

 はたして私達が到達するのは、暴走制御を為した〝レーヴ〟でしょうか?
 それとも破滅不可避の〝ヴィクター・フランケンシュタイン〟でしょうか?
 或いは〝ゴーレムを止めた幼女〟になるのか〝池に投げ捨てられた幼女〟になるのか……。
 いずれにせよ〈科学発展〉というモンスターは、常に目と鼻の先に居る隣人なのです。
 頼もしくも恐ろしい力〈ゴーレム〉は、形態を変えて時代を越えています。



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