休日出勤と彼の優しさ Rev1

文字数 704文字

ある日曜日、私はひとり休日出勤がありくたくたになりながら仕事をこなしていた。
心がかさつくのを感じた。
ふとメールボックスに目をやると、おずおずとメールを書き始めた。
「~さん、こんにちは。私は今日、休日出勤でつらいです。とても疲れました。いつもはVBAの質問メールですが、今日はこんな中身のないメールを送ってごめんなさい。」
理性が疲れているのか、感情だけで意外とさらさら本文が書けた。

下書きを保存する。
またメールを開く。

えいっ!
送信ボタンを押してしまった!
不用意にこのようなことをしたのは生まれて初めてだ。

自分の意志とはいえなんでこんなことをしたのだろうと思った。彼を困惑させるだけなのに。

月曜日、どきどきしながらメールを起動した。彼専用のメールフォルダに「1」と数字が付いていた。

まさか、返信されてる!?
私はじわじわと機嫌が良くなるのを隠せなかった。
マスクの下の素顔はその場にそぐわないくらい笑顔だったに違いない。

周囲に人がいなくなるまで待つのが耐えられなかった。彼はいったいあのメールになんと書いたのだろうか?
ついにメールを開いた。

『休日出勤、お疲れさまでした。以上、よろしくお願いいたします。』

わ、
わあ、、

彼らしい一文、そしてこんなに短いのに気を遣ってくれているのが分かる一文。
動機が困惑したからとりあえず書いたのだとしても私は嬉しくてたまらなかった。

やさしい人…

気付けば私は涙ぐんでいた。
私の会社は9割が男性で、男の人はいっぱいいる。
でも、私は彼が良い。彼じゃなきゃ嫌。
文字の彼は彼のほんの一部だ。それが彼の全てではないのは分かっている。

でも…

私、彼のことが好きだ。

そのことを改めて実感した瞬間だった。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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