ヘッドセット動作確認テスト『本番』

文字数 676文字

私は会議室に入ると、Webミーティングのセッティングを始めたが
「間違った、ヘッドセットだけでいいんだった。」
用意した機具をまた収納した。

15時まであと5分。
(何をもたもたしているの、私)

焦る。

私はTeamsアプリケーションを立ち上げ、検索画面で彼の名前を打ち込もうとしたが履歴が表示されることを思い出し、即座に中止した。

メールの個人プロパティからチャット画面を開いた。
彼とのチャット画面は当たり前だが新規作成の空白画面だった。

本当に始まるのだろうか。
騙されているんじゃないか?

彼の表示はオンラインだった。
おそるおそるチャットを打ち込む。
「こんにちは、こちらはセットが終わりました。」
「開始しても、よろしいでしょうか?」

「承知しました。」

彼からチャットが返ってきた。
(返事した!)

私は震える手で通話ボタンを押した。
応答待ちのメロディが流れる…

メロディが切れた。
通話が開始されたのだ。

「もしもし、~さん、聞こえますか?」
私はおそるおそる話しかけてみた。

あちらから何の反応もない。

というか今は無きアナログテレビ時代の砂嵐のような雑音だらけで動作がうまくいっているか分からない。

私は先輩に感謝した。
(ヘッドセットはさっき通話できていたし、これはあちらに問題があるのでは?)

私はこちらからの声も彼に聞こえないと思い、チャットに打ち込んだ。
「なにかはなして」
ひらがなだけにしたのは私の焦りの様子を示すため。敬語を省いたのは彼が私を近くにいると感じさせるため。
意外と自分は冷静だった。

10分くらいその様子が続いたが、会話にならなそうなので私は一方的に通話を終了した。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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