理想の彼

文字数 539文字

彼と『すれ違い』が始まってから、私は夢や幻想で彼を見ることがあり、悩んでいた。

私は夢に出てくる男性のことをしばらくの間、無条件に好きになってしまう厄介な癖がある。

また、すれ違いの日課により今まで忘れていた彼の顔を正確にインプットしたため夢でも幻想でも彼の動きがよりリアルなものとなっていて私をさらに悩ませることになった。

夢や幻想に出てくる彼は、現実にいる『実体の彼』と顔は同じだが彼が私に対して『絶対にしてくれないであろう』ことをすべてしてくれる。
つまり、『理想の彼』が自分の中に出来たのを感じた。

これは彼ではないと自分に言い聞かせるが、私はその幻想に溺れていく。
夢の中に行けば、目を少しつむれば、彼がやさしく微笑み髪を撫でてくれるのだ。
実体の彼が私には絶対見せない『感情』が理想の彼からは受け取れた。

私は満たされた気でいた。
でも実はそうではなかった。
理想の彼に固執するほど、実体の彼への執着心が生まれたのだ。

彼がこのやさしい笑顔を他の女性に向けていたらどうしよう。
彼にすでにパートナーとなる女性が居たらどうしたら良いのだろう。
私はそのような思いが広がるのと同時に、自分が割れてしまいそうな気持ちになった。

「耐えられない…」

私は理想の彼の腕の中にいるのに、涙が止まらなかった。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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