ヘルプデスクのコーチング

文字数 628文字

私は彼にすべての条件のリストを送り、彼はその機能を実装させる。
また彼はマクロの作成者の意図を探り、不具合や処理能力の弱点を克服させる。
特徴的なのは彼は私にも協力をさせたことだ。
ここの部分は自分でも出来るから設定してみてくださいとか、実践させるように返信してきた。
私はこわごわながらもチャレンジしてみたり、彼に教わったりして発注するだけでなく徐々に自分のスキルアップにも目が向くようになった。

ただ、私は後輩の女性のことがまだ気がかりだったので、ある日「~さんがこのように親切に対応してくれるのは後輩の~さんのためですか?」と意地悪な質問をしてしまった。
彼はそのようなレベルまでのめり込んでくれていたから。
誰かのためでないと不思議なくらい。
彼はその質問には答えなかった。
なんなら私の「気持ち」に関する文章には一切反応しなかった。
ただ、マクロ作成者が崩壊寸前の内容でがんばろうとしていた痕跡を認めるような発言をしていたっけ。
私はもやもやしながらも彼の完成を待つことにした。

こうして私が発注したうち3種類ができあがり、彼の大仕事は山場を越えた。
私は感謝を伝え、そのマクロを大々的にチームへリリースすることが出来た。
彼が改善したマクロは同じ機能を持つ別の部署が作った別のソフトより処理が早く、ふたつのタイムトライアルの成績も好評だった。
私はその状況も彼に伝えた。「タイムトライアルテストまでに改善が間にあって良かった」とメールを寄越したあと、しばらく連絡が途絶えた。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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