『私専用』ヘルプデスク Rev1

文字数 864文字

さよなら、私の恋。

それから何ヶ月か私は情緒不安定で泣きながら運転したり飛行機に乗ったり電車に乗っていたっけ。
告白していないのに実質失恋したようなものだからやるせないし、年齢なんてもはや運だし、タイミングだしどうにもしようがない。泣きに泣いた。

彼が居なくなって1ヶ月、3ヶ月、半年…
私の周りはあんなに彼にお世話になったのにすっかり忘れたようにもはやいなかったかのように彼の名前を出すことすら消えて世界が回っている。
対して私だけ滞留が起きていて、ふとした拍子に彼との思い出をループしている。
そして新しいエピソードが増えないことに絶望している。
彼にはもう会えないのだと思うとじりじりと心が削がれる気がする。

実は彼と関わる機会はもう一度巡ってきたのだが、そちらのオフィスに行くのは遠いから遠隔で操作させてくれと言われた。
それは依頼人が私だから?
あの後輩ならオフィスまで来てくれたの?
私の心は嵐だった。
結果として遠隔でも彼は仕事をやってのけたので業務的には無事完了となった。

彼からなんでも連絡して良いと「許可」を得ている私は諦めが悪かった。

なにかしら彼に結びつけるものは無いかと探したのだ。

それで思いついたのは複雑なPC設定の件やExcel VBAだった。
彼に質問として投げかければ何か返事は来るだろう。
それで細い糸を維持するしかない。

私は月に1~2度2~3ターンで終わるような質問を彼に投げかけてみた。
質問の内容はネット検索してもギリギリ解決しないような量と質のものばかりで彼の協力を仰いでいる理由も納得の内容である。

彼は半日から一日単位のペースで返事をくれ、問題は解決に向かっていき、「ありがとうございます、今回もお世話になりました」の流れだった。

自惚れかもしれないが、彼は私にだけこのような細やかなサポートをしているのではないかと思った。
少なくとも完全に異動してからは私の周囲の人にはしていないようだった。

彼が私にだけ特別に対応してくれるその姿勢は、まるで私専用のヘルプデスクのようだった。そんな小さな優越感が私の中に芽生えていた。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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