不可解なアピール

文字数 489文字

荷物の運搬も終わり私の仕事は終わった。
ただ…私は彼と話せなかった未練があった。
(せっかく会ったのに、少しは話したかったな。)
(でも何も話すことないんだよね。)
(メールでは山ほど質問があるのに、対面では何も話すことがないんだ。)
そんなことを思いながら彼にメールを書いた。
彼はこの手のメールには一切反応しないから、返事が来るかは賭けだった。
「今日は偶然お会いして驚きました」

彼は私のメールには直接答えなかった。
「実は気付かれなかったけれど一昨日にもそちらのオフィス近くの階段ですれ違っています。(人違いでなければ)」

え?
どういうこと?

私は別に私が悪くないのに、とっさに彼のご機嫌をとろうとした。
「それは~さんと目が合わなかったからですね。今日は~さんの目を見たらすぐ分かりましたもの」

彼からの返信はなかった。

私は納得がいかなかった。
『実は一昨日にもすれ違っていました。』
彼のメールをもう一度読み返す。
そこに行間なんてない。
彼は私に何かを伝えようとしているのか、それともただの気まぐれか。
このメールは私が現実の彼を深く知りたいと思うのと同時に、ある種の違和感を感じるきっかけとなった。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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