ぼろぼろの私と『思い出の彼』

文字数 534文字

彼と再会したのが6月の終わりくらい。
今は7月の半ばだ。
理想の彼に悩まされて2週間以上が経った。
情緒がぼろぼろだった。

それでも業務中は集中できているから良かった。家に帰ったらひたすら泣いた。
何が悲しいのかもはや分からない。
ただ、彼は『自分のものにはならない』ということだけはなぜか確信していた。

私は彼との思い出にすがっていた。
「あなたと話すのは楽しい」
(参照:助けて、ヘルプデスク! )
「異動してからも何かあれば連絡していいですよ」
(参照:異動の挨拶)

『思い出の彼』は私に確かにそう言った。私は理想の彼でなく実際の彼と私の思い出にしがみつくことで彼と私の可能性はまだあるように見せかけようとした。
それは誰かではなく自分自身にだ。

でも、肝心の彼自身が忘れてしまったらどうなるのだろうか。
ヘッドセットの動作確認の時、彼は『王子様』のエピソードを完全に忘れていた。
その瞬間そのエピソードを持つ『思い出の彼』が一瞬で居なくなったように感じた。
共有できなくなったとき、思い出の彼は消えてしまう。
覚えていて欲しいと思っても、忘れていたらと思うと怖くて聞けない。

せめて今、彼は私とメールのやりとりをしつづけている理由は覚えているのだろうか。

彼はどうして私に付き合い続けているのだろう。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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