進捗会議と『名無し』のシステム部 (2)

文字数 757文字

「~さん、ご無沙汰しております。」
私は担当者さんに話しかけた。
集中しているのかなかなか気付いてもらうのが大変だった。

「おおー、ひさしぶり。どうしました。」
担当者さんとはもう何年も前から親しくしているが、担当者さんの仕事で話しかけるのは久々だ。

「今担当されている装置はどのような測定をするものなんですか?」
私は好奇心から動いてしまうタイプなので自分が理解できるかどうかは二の次で質問してしまうのだ。

「微小欠陥検査装置といって、ある特定の理由から表面に起きる欠陥を見つけるための装置なんですよ。興味持ちましたか?」
「はい、私も昔似たような装置を扱っていたのでなんだか兄弟にあったような気持ちになりました。」
「あー!あったね!あの装置!」
「ですよねー!」
ふたりしてまだ詳しい話もしていないのになんだか盛り上がってしまった。

「あの、さっきの発表で『システム部』と話していたのは私のサイトのシステム~課ですか?」

私は『本題』を切り出した。

「そうです、そうです。今度メーカーさんの会議に同席してもらうことになって。導入までにかなり苦戦しているんですけど、メーカー側の仕様が社内の仕様に合わないらしくって、システムさんが直接来てくれることになりました。現場にもテストに来てくれて。」

「そうなんですね、システムさんって受け身なんだと思ったら、結構アクティブな方もいらっしゃるんですね。」
「うまくいくといいんですけどねぇ。」

「会議の後半が始まったので着席してください」
司会に注意されてしまい会話は終わった。

私は勝手に彼がプロフェッショナルとして担当者さんの傍らで働いている様子を思い浮かべた。
私が思う、彼の理想の姿だ。

しかしまだ彼だと確定したわけではない。

(自分のサイトに戻ったら、彼にメールしてみようかな…)

私の胸は高鳴っていた。
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登場人物紹介

私:30代後半の女性

昔は綺麗だった。見た感じさほど変わりはないが、今は自分の加齢に悩んでいる。

年上が好みだったが、これから好きになるある男性は年が下かもしれないので落ち着かない。

実体の彼:年令不詳だがおそらく私より年下

優しい、誠実な仕事ぶりの中途入社社員。

こちらから話しかけない限り、ほとんど話さない静かな性格。

私は彼がどの程度年下なのかが分からず落ち着かない。

あるきっかけで私と長い期間社内メールでのみ個人宛てでやりとりをする関係になる。

その後再会した彼は、今まで私が知る彼とは言動、行動が違っていて私は受け入れられず混乱している。

理想の彼:理想化した彼

実体の彼に出来ないことは全てしてくれるが私はだんだん違和感と不安が膨れ上がっていく。

思い出の彼:私の思い出の中にいる彼。

数種類のエピソードを持っており、時が経つごとに輝きが増す。

誰にも共有することが出来ず、なんなら実体の彼すら忘れているエピソードもある。

文字の彼:私と一番長く過ごしてきた彼。

私は再会するまで彼の顔は思い出せず、『文字の彼』として受け入れていた。

私のトラブルをいつも気にかけ、いつでもすぐにメールで助けてくれる安心感のある彼。

彼のただ一つの謎はこんなに優しいのに『感情』が入った文章には一切反応をしないこと。

自称イケメン(ただし本当にイケメンです。)の先輩。

自分に自信があり、仕事も顔も自分が一番だと思っている。

ただ、既婚者なのに女の子をひっかけているところはクズである。

私にはないものばかりで、『ある意味』あこがれの先輩。

『彼』への想いの相談相手になってもらったが…

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